いつ大掃除で嫁さんに粗大ゴミとして棄てられるか、ビクビクしているdreamtaleです。
ども。

早速今日も、アジ歴の史料から見ていきましょう。
『2 〔明治42年〕12月29日から〔明治43年〕1月22日(伊藤公爵薨去後ニ於ケル韓国政局並ニ総理大臣李完用遭難一件)(レファレンスコード:B03050610400)』より。
大垣丈夫の行動についての、1910年(明治43年)1月9日付『乙秘第26号』。 【画像】


大垣丈夫の行動

滞京中の大垣丈夫は、別紙写の如き合邦反対の理由書を起草したる趣にて、近々印刷に附し、各方面に頒つ計画中なり。

追て同人は韓国謝罪使の一行に会見し、一昨7日は同行し、故伊藤公の墓前に参拝せり。



以前、zeong氏の調査に乗っかって連載した、韓国謝罪委員における墓参の史料と同一のものである。
前回連載時にはテキスト化していなかった為、今回あえてテキストに起こしてみた。
墓参に関しては既に取り上げているので、続けて別紙の合邦反対の理由書について見ていこう。
【画像1】 【画像2】 【画像3】 【画像4】 【画像5】


合邦反対の理由 大垣丈夫談

日韓合邦は、目下の状勢に於て寧ろ我国の一大不利なりと断言するを憚らず。
其理由は、概ね左の五項を以て之を悉くすを得ん。

一.新政に対する韓民一種の危惧心は、未だ全く除去されたりと云ふを得ず、この際若し強て合邦せば一般の民心之が為めに自暴自棄に陥り、即ち一面には産業の衰微を来たすと共に、更に他の一面に於て排日思想再燃の目と為り、少くも今後10年乃至15年間は我国人の地方発展を阻止するに至るべし。

二.左なきだに保護的経費及建設費は年々累進して、既に可なりの多額に上り、従て其れ丈けの新負債を我国民の頭上に加へつつあるあるに、今若し合邦せば、更に一段の施設費を要し統治費も亦多額に上り、勢ひ一層の苦痛を我国民に与へざるべからざる道理なり。
故に、合邦論其のものは仔細に此点の利害をも計較し、徐に之を打算するの要あり。
猥りに小功名心に駆られて名義上の合邦を急ぐは、徒らに無用多額の多忙を招くに過ぎざるのみ。

三.合邦主唱者たる一進会が、実数4,000に満ざる会員を以て漫りに百万と称するは、虚声も亦太甚し。
一進会員集して百万なりとせんが、老幼及婦女子を除くの外、殆ど韓民の総てを挙て同会員たらざる可らざる筈なり。
然るに、事の実際に於て一部少数の同会員なれば、左まで政治的及社会的勢力を有する者にあらず、反て同会は予て韓民多数の排斥を受け居るは事実なり。
故に民心の安堵を図らんとせば、窮余の一策に出でたる同会の合邦論に対し、特に深重の顧念を払ふの要あり。
実状、洵とに然り。
区々たる一進会を非難するにあらざるなり。

四.単に声のみにても、日韓合邦の四字が実際異様の響きを為して、清廷及清国人に少からざる不安を与ふるの恐れあり。
而して其結果、吾国人にして手を支那の利源に離れしむるの変態なきを保すべからず。

五.韓国各道到る処として教民の集団を見ざるは莫し。
而かも教民の行動に由て、我外交上の不利を招きし前例に乏しからず、今回卒然として起れる合邦論の如き亦盖し教民の口述に上り、甲乙相伝へて、意外にも国際上の一亀裂を不吉の流説中に現出せずとも限られず。

以上、5項中の第2以下は、賢明なる政治家及外交かの判断に一任すべしと雖、第1項に至りては、何人の反対あるも我確信を翻すべき理由を有せず。
何となれば、予は5年間韓国に在りて、自強会及大韓協会顧問の任に当り、傍ら韓字新聞に従事し、国情調査を為したる結果として動かすべからざる証拠と確信とを有するに依る。
惟ふに、今や保護政治は着々親交し、外交、軍事、司法の三権は、全く之れを我手に収め、其他の諸機関も大抵邦人官吏の手に依て取扱はれ、統監は親しく最上機関を指揮監督すると共に、従来継子扱ひを受け居たりし排日派にすら一道の慰安を与へ、大に信頼の念を起こさしめたり。
斯くして国情益々良好に赴き、不平者日々減少し、心ある者争ふて統監旗の下に自奮自励せんことを期するにあらずや。
且各地に産業組合、工業会社、植林事業等の著しく勃興したるは、何れも韓民の生活状態を改造すべき前途の光明に属し、一として新政の徳に基かざるはなし。
若し、現状を以て進行せば、将来の大成期して待つ可し。

然るに我国人にして、何の必要ありてか有利の保護政策を棄て、強て不利の合邦実行を提唱せんとするや解すべからざるなり。
若し凶行の続出に由り、一概に国情険悪の結果なりと速断するものあらば、大なる謬想と云はざるべからず。
彼の「スチブンス」氏と云ひ、伊藤公爵と云ひ、李完用氏と云ひ、其遭難は孰れも韓人の凶行に相違なしと雖、凶行者は悉く治外に住居する乱民にして、韓国に現状と懸隔せる思想を有するものたるを知らざるべからず。
浦塩斯徳に韓人同義会なる者あり。(会員34、5名)
曾て「スチブンス」氏を暗殺し、米国の監獄を脱走したる田明雲、海牙万国平和会議へ出掛けたる連中、及5年前に軍部大臣李根澤氏を刺して逃亡し、王世東と変名せる者等、悉く彼徒に属す。
伊藤公爵を狙撃したる安応七(一名安重根)は実に其牛耳を執り、李完用氏を刺したる李在明も亦其一人にして、孰れも常に治外に住居す。
思ふに、治外の乱民を取締るは別途の方法に属す。
然るに、彼等の凶行を以て直ちに韓国の現状を険悪なりと推想し、此動機を捉へて周章して合邦論を提唱したるにあらざるか。
然る所以のもの、畢竟韓国に関する知識乏しきに依るべしと雖も、国家の利害得失に対する比較研究を軽視したるの跡あるを掩ふこと能はず。
是を以て予は、短簡に其反対理由を説明するのみ。



これまで取り上げてきた大垣丈夫の言説と、あまり変わる所は無いので、一気に引用させてもらった。
ここでは、合邦論の反対理由として、5つの項目が挙げられている。
1.合邦を強行すれば、韓国人が火病を起こす。
2.日本にかかる費用負担。
3.一進会はみんなの嫌われ者だし。
4.合邦することで、中国利権が失われるかもしれない。
5.教民(恐らくキリスト教徒)の行動によって引き起こされるかもしれない国際問題。
簡略化するとこんな感じ?

この文書も例の如く、理由の3の部分抜粋によって、一進会が実数4,000以下であり、韓民多数の排斥を受け窮余の一策に出たとして、一進会否定の史料として良く使われるようだが、大垣丈夫も退韓命令を受けそうになって帰ってきたわけであり、朝鮮問題同志会(対韓同志会)等に見られる日本国内の世論からして、自らの正当性というか妥当性を示さねば立つ瀬も無いわな。
おまけに、理由の2に「故に、合邦論其のものは仔細に此点の利害をも計較し、徐に之を打算するの要あり。」とあるとおり、合邦に反対じゃねーし。
中盤では外交、軍事、司法の三権も握ってるし、保護政治によって国情も益々良好となってる、と。
後半では、スチーブンス、伊藤博文、李完用、李根澤などの暗殺や暗殺未遂に触れ、治外の乱民の仕業であって韓国の実際の国情と違う、と。
これらを見られると困るから、部分抜粋なのかしらん♪

11月24日のエントリーでも言いましたが、「合邦」自体に消極的賛成や、時期尚早で反対ではないとする意見を多数史料で見てきた私には、何で「一進会不支持」や一進会の数(しかも根拠不詳)ってのがそんなに大事なのか、さっぱり分かりません。(笑)

続いても大垣丈夫について。
1910年(明治43年)1月11日付『乙秘第43号』。 【画像】


大垣丈夫に関する件

韓国自強会及大韓協会顧問大垣丈夫が日韓合邦反対の理由なるものを起稿せることは既報(一昨9日乙秘第26号)の通りなるが、今般一万部を印刷し、貴衆両院議員及新聞社并本邦在留韓国人に配布し、尚ほ近く神田錦輝館に於て合邦反対大演説会を開かんと昨今計画中なり。
洩れ聞く所に依れば、本人は李完用より合邦反対運動費として金壱万円を受取り、其内5,000円を大韓協会の費用に充て、3,500円を韓国京城に在る家族に預け、残1,500円を携帯、出京したりと云ふ。

追て、今般印刷せる合邦反対理由は既報の通りにして、紙末に左の文字を附記せり。

大垣丈夫

頭白経綸功未成 帯将感噴出韓京
氷心一片請看取 四十余年只一誠



貴族院議員、衆議院議員、新聞社、在日韓国人に先ほどの「合邦反対の理由」を配布し、神田錦輝館で演説会を開く予定、と。
で、例の李完用の運動資金の話が出てくる、と。

次は朝鮮問題同志会(対韓同志会)に関する史料。
1910年(明治43年)1月11日付『乙秘第49号』。 【画像】


韓国政況視察員の件

朝鮮問題同志会韓国政況視察員大谷誠夫、五百木良三の両名は、本日午後3時40分、新橋発汽車にて渡韓の途に就けり。

以上。



大谷誠夫と五百木良三かぁ。
どっちも物書きですな。
まぁ、今頃韓国に行っても、殆ど得るところは無い気がしますが・・・。

今日最後の史料も朝鮮問題同志会(対韓同志会)について。
1910年(明治43年)1月18日付『乙秘第105号』。 【画像】


朝鮮問題同志会員下の関に向ふ

朝鮮問題同志会員望月龍太郎は、宋秉畯に会見の為め昨17日午后3時40分新橋発。
下の関に向へたるが、来る22日頃帰着の同会派遣韓国視察員大谷誠夫、五百木良三の2名を同地に於て待合せ、然る後、渡韓の予定なりと云ふ。

以上。



大谷誠夫と五百木良三、1月11日に発って22日帰る予定、と。
で、入れ替わるようにして、望月龍太郎渡韓予定。

むー。
やっぱり、合邦問題における宋秉畯って、何してたんだろう・・・?


今日はここまで。


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