WCで、単なる負けなら兎も角、逆転負けしかも1-3という事実にショックを受けているdreamtaleです。
ども。

さて、前回は創氏改名の元となる朝鮮民事令第11条について、制定当時の条文と第1回目の改正条文について、その理由を含めて見てきました。
今日もその続きということになります。

第2回目の朝鮮民事令第11条の改正は、1回目の改正の翌年、1922年(大正11年)11月に行われるのですが、残念ながらアジ歴ではまだ公開されていないようです。
非常に大幅な改正なので理由説明を見てみたかったんですが、今日のところはその条文だけを見てみましょう。

第11条 朝鮮人の親族及相続に関しては、別段の規定あるものを除くの外、第1条の法律に依らず慣習に依る。
但し、婚姻年齢、裁判上の離婚、認知、親権、後見、保佐人、親族会、相続の承認及財産の分離に関する規定は此の限に在らず。
2 分家、絶家再興、婚姻、協議上の離婚、縁組及協議上の離縁は、之を府尹又は面長に届出づるに因りて其の効力を生ず。
但し、遺言に依る縁組に付いては、其の届出は養親の死亡の時に遡りて其の効力を生ず。

第11条の2 朝鮮人の戸籍に関しては、後7条の規定に依る。

第11条の3 戸籍事務の管掌に付ては戸籍法第1条、第2条、第4条及第7条の規定に、戸籍の訂正に付ては戸籍法第164条及第165条の規定に、戸籍事件の抗告に付ては戸籍法第169条乃至第175条の規定に、過料の裁判に付ては戸籍法第179条の規定に依る。
但し、戸籍法中市町村とあるは府尹又は面長に、市役所又は町村役場とあるは府庁又は面事務所に、区裁判所とあるは地方法院に該当す。

第11条の4 戸籍事務は、府庁又は面事務所の所在地を管轄する地方法院の院長之を監督す。
2 戸籍事務の監督に付ては、司法行政の監督に関する規定を準用す。

第11条の5 正当の理由なくして期間内に為すべき届出又は申請を為さざる者は、10円以下の過料に処す。

第11条の6 朝鮮総督の定むる所に依り、府尹又は面長が戸籍事務に関し期間を定めて届出又は申請の催告を為したる場合に於て、正当の理由なくして其の期間内に届出又は申請を為さざる者は、20円以下の過料に処す。

第11条の7 府尹又は面長は、左の場合に於ては30円以下の過料に処す。
 1 正当の理由なくして届出又は申請を受理せざるとき。
 2 戸籍の記載を為すことを怠りたるとき。
 3 正当の理由なくして戸籍簿、除籍簿又は朝鮮総督の定める所に依り、閲覧を許したる書類の閲覧を拒みたるとき。
 4 正当の理由なくして、戸籍若は除かれたる戸籍の謄本、抄本又は朝鮮総督の定むる所に依り、交付すべき証明書の交付を為さざるとき。
 5 其の他戸籍事件に付職務を怠りたるとき。

第11条の8 戸籍の記載を要せざる事項に付、虚偽の届出を為したる者は、1年以下の懲役又は100円以下の罰金に処す。

第11条の9 第11条の3及び第11条の4に規定するものの外、戸籍簿、戸籍の記載手続、届出、其の他戸籍に関し必要なる事項に付ては朝鮮総督の定むる所に依る。
第11条については、これまでの「親権、後見、保佐人、親族会」から、さらに「婚姻年齢、裁判上の離婚、認知、相続の承認、財産の分離」が朝鮮の「慣習による」から除外されていますね。

第11条の2以下は、戸籍に関する変更と言っても良いでしょう。
ちなみに、この第11条~第11条の9までの各条は、次の画像によると施行日は1923年(大正12年)7月1日であり、大正11年朝鮮総督府令第154号「朝鮮戸籍令」の施行日と同一ですので、その関連で設けられたのでしょうねぇ。

つうか、アジ歴に「朝鮮戸籍令」に関する史料も無ぇし。(笑)
返す返すも改正案に附属する理由書を見ることが出来ないのが残念です。
恐らく、次にやる本題の第3回の改正の理由書を見る面白さからすると、今回の改正理由もかなり面白いんではないかと思うんですがねぇ・・・。
ま、最初から不定期連載と言ってあるので、どこぞで見つけるか、アジ歴にアップされたら、その時にやりましょう。

この改正で、創氏改名に関して特に重要なのが、第11条の4。
以前、ENJOY Koreaの「分かりやすい説明について」で紹介した画像を始め、関連する史料等で地方法院名義の物が良く見られますが、地方法院が戸籍事務の監督をしているからだ、と。

さて、この改正案の提出理由を見ることはまだ出来ませんが、1922年(大正11年)11月22日付の東京日日新聞のものとされる記事切り抜きがありますので、取りあえずそちらを見てみる事にしましょう。
アジア歴史資料センター『朝鮮人ニ対スル施政関係雑件/一般ノ部 第二巻/十四/朝鮮民事令並刑事令改正制令案(レファレンスコード:B03041604700)』より。

内鮮人の結婚
天下晴れて出来るようになった

朝鮮民事令並びに刑事令改正制令案は、21日の閣議に於て決定したが、朝鮮民事令の改正要旨は、和議破産並びに戸籍に関しては、内地に施行の和議法、破産法、戸籍法によることとなったので、これに関する規程を設けたると、次ぎに鮮人の親族、相続等に関しては、従来は全て慣習によっていたのを、今回は原則として慣習によるも特殊の事情、例えば結婚の年齢、離婚その他については、内地同様親族法、相続法によるとに改正したから、今後は内鮮人の結婚は正式に出来ることになった訳で、右制令の施行期日は朝鮮総督が追って決定する筈であるが、和議法、破産法同様、明12年1月1日より実施されることに決するであらうといふ。
また、朝鮮刑事令中改正政令案は、内地における刑事訴訟法改正に基づいて改正されたもので、本令の施行期日も新刑事訴訟法同様、明後13年1月1日より施行さるることとなるであらう。
なほ、朝鮮総督府裁判所令の改正は、前記の如く民事令刑事令改正の結果に基づくものであると。
第11条の「婚姻年齢、裁判上の離婚、認知、相続の承認、財産の分離」が新たに朝鮮の慣習から除外された事によって、日本人と朝鮮人の結婚が、慣習ではなく法的裏付けを持ったって事かな?
結婚・離婚・認知・相続・財産分与。
全部それ絡みですしねぇ。
ま、詳細不明なので、一応参考ということで。


今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正