不定期のつもりで、まずは取っ掛かりのために、『朝鮮民事令』の改正過程でもやるかと気軽に始めたわけですが、結構長くなってきてます。
相変わらず見通しが甘いですねぇ。(笑)
ってことで、今日も前回の『公文類聚・第六十三編・昭和十四年・第百巻・司法一・裁判所・公証人・民事(民法・商法)/朝鮮民事令中ヲ改正ス・(壻養子制度創設及之ト関係スル氏ニ関スル規定)(レファレンスコード:A02030160700)』から、改正理由の続きを見ていきたいと思います。
では早速。

第11条の4 婿養子離縁又は縁組の取消に因り、其の家を去るも家女の直系卑属は其の家を去ることなし。
2 前項の規定の適用に付ては、胎兒は既に生れたるものと看做す。

理由
慣習に依れば、養子縁組に因り養家を去るときは、妻子は夫に随伴す。
養子縁組が、詐欺又は強迫に因り為されたるときは、之を取消し得るを慣習とす。
右の場合に於ても、妻子は夫に随伴すべきものなり。
然れ共、婿養子縁組は家女と養子との間に生れたる子を第2次の相続人と為すべき趣旨なるを以て、婿養子は離縁又は縁組の取消に因り其の家を去るも、家女と養子との間に生れたる子は、家に留まらしむるの要あるべし。
是、本條第1項を設けたる所以にして、第2項は、婿養子縁組の離縁又は取消当時に於ける胎兒に関する規定なり。
養子縁組の場合と、婿養子縁組の場合は当然対応も違うわけで。
婿養子縁組の根本的な考え方からいけば、当然相続人として離婚しても子供は母親の家に残す必要があるんですね。
尤も、これだと男性が単なる種馬になる恐れもあるわけですが・・・。(笑)
逆に、男性が連れていく事になれば、女性がお産の道具化する恐れがあるわけですが、この場合は「相続」に関してさらにややこしい事になるという話なんでしょう。

本来は、「相続」や「親権」なんかも含めて裁判の対象とすべきなのかもしれませんが、それは民法に一元化された時に実現する筈だったんでしょうねぇ。

さて、次は少し前の条文に戻って、第11條の2の改正理由となります。

第11条の2 養子は養親と姓を同じくすることを要せず。
但し、死後養子の場合に於ては此の限に在らず。

理由
朝鮮に於ける養子は、奉祀の不断と血統の連続とを目的とす。
而して、祖先の祭祀は長子孫たる男子に於てのみ之に当るべきものとせるを以て、養子は男子に限り、而も父系主義に従ふ結果として、男系の血族たることを要件とす。
所謂同姓同本の要件是なり。
姓は血族の称号を指し、本とは其の出身地を指す。
蓋し祭祀継続の主眼に附するに、血統の連続を求めて直系の血統断絶に際し、擬制の子をして可及的自然子に近邇せしめんとするに外ならず。
然れ共、徒に之に執着して家名を保持し、祭祀を継続するべき適当なる者なきにも拘らず、養子は必ず之を同姓中より選ばざるべからずと為すは、人情自然の趨く所を阻止抑圧するのみならず、夙に判例に依り祭祀相続を以て道義上の地位の承継に過ぎずと做せる今日に於ては、法律上より謂ふも同姓同本の要件は、其の大半の意義を喪へり。
加之同姓は相婚せざる慣習なるを以て、同姓同本の原則を維持するに於ては、遂に婿養子縁組の成立は之を望むべからず。
是、本條に於て養子縁組の要件を緩和し、異姓の男子と雖も養子たり得る道を開きたる所以なり。
養子を為し得べき者が養子を為さずして死亡したる場合に於て、一定の者が養親たるべき者の死亡後、養子の選定を為す慣習あり。
之を死後養子と称す。
民法の家督相続人の選定の観念に稍近きを以て、全般的立法の際には之に依り該慣習は之を容認せざる方針を以て、該慣習の拡張を計るは相当ならず。
仍て本條但書に於て、異姓の死後養子を認めざることとしたり。
チェサ、かな?
祭祀は、長子・長孫である男子が当たるものとされ、養子も父系主義で男系の血族じゃなきゃならないのが基本なわけで、この辺で「異姓養わず」なわけですね。
で、これに執着して家名の保持と祭祀の継続に当たる適当な者が居なくても、養子は必ず同姓中から選ばないといけないというと、不具合は当然出るわけで。

そして、これまで何度も述べてきたとおり「同姓娶らず」なので、両方あわせると婿養子制度は成り立たない。
ということで、「異姓養わず」の方を条件緩和、と。

一方で、養子しなきゃ駄目な者が養子をもらわずに死んだ場合、死後に一定の者が養子を選ぶという慣習が朝鮮にはある、と。
これは、日本の民法における家督相続人の概念に似ているから、この慣習も全般的立法の際には民法の家督相続人と同じくしていく方針なので、この場合における養子に異姓を認めて慣習を拡張するような真似はしないで、2項では死後の異姓養子を禁止したんですね。
んー、養子しなきゃ駄目な者に女子の実子が居た場合、相続権はどうなるんだろう?


ってことで、今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)