クロアチア戦は、無様な試合になってくれさえしなきゃいいやと思っている、かなり弱気なdreamtaleです。
ども。(笑)

つうことで、サッカーと昨日さぼっちゃったのもあって、今日は早めの更新。
史料が「濃い」ので中々終わりませんが、そろそろ「じゃあ朝鮮民事令における創氏の意味って何?」と思ったりするわけで、その辺が今日から始まります。
それでは、前回の続きから。

第11條第1項中「氏」

理由
朝鮮の慣習に於ては、人は皆姓と名を称す。
姓は、男系の血族たることを示し、身分又は戸籍の異動あるも、固より之に伴ひ変改すべきものに非ず。
故に、一家の内数姓を観るは之を常態とせり。
即ち姓は家の称号に非ず。

家族制度行はるる朝鮮に於て、社会構成の単位たる家に付之を表徴すべき何等の称号なく、各家を区別すべき標示なきが如きは、家族制度の美風を保持する所以に非ざるのみならず、世態複雑に趨き、人事錯綜し、又取引の頻繁に行はるる現代時勢に於て、各人所属の家の如何は其の利害に関係すること深きを以て、容易に之を確認するに足るべき方途を講ずること洵に刻下の急務なるのみならず、異姓養子を認め、異姓男子をして戸主相続を為すことを認むるに於ては、家名を襲用せしむるに非ざれば、被相続人と相続人は姓を異にし、相続の観念に副はざるべし。
即ち、各家に称号たる氏を創定するの要あり。
茲に改正を要する所以なり。
姓は改変すべきものではないから、氏を創定する必要がある、と。
簡単に言うと、もの凄く簡単。(笑)

第一点は、良く言われる日本的な家族制度への移行を目的としたもの。
将来的に、日本の民法に一致させるのが当初目的と謳われてますからねぇ。
まぁ、当たり前と言えば当たり前の話。

次に世の中は複雑となり、個人の身分や地位等も複雑に入り組み、取引も頻繁になっている現代の情勢では、各個人の所属する家がその利害に関係するため、これを簡単に確認できる方法として必要だ、と。
抽象的すぎて良く分かりませんが、経済的なものが含まれているのは確実なようで、確かに同姓同名が多数いたら取引とか混乱するよねぇ等とは思うんですが、あまり深く突っ込んでいくと、調査に次ぐ調査で出てこられなくなりそうなので、これはこのまま保留しておきます。(笑)

最後に、異姓養子に関する場合。
婿養子として来た場合であっても、父系の姓・本貫は当然変わらないわけで、ではその子供はどうなるかというと、恐らく父系の姓・本貫をそのまま継承すると思われます。
「姓不変」の慣習を守ると、金さんのところに朴さんが婿養子で来ても、孫はやっぱり朴さんになっちゃうわけで、それってどうよ?っつう話が一番分かりやすいかな?
ちなみに、現代韓国の『養子縁組促進及び手続に関する特例法』においては、「養子となる者は、養親が願うときは、養親の姓及び本に従う」とされてるようですね。
いや、「姓不変」じゃないんですけど。(笑)

ってことで、家の称号として「氏」を創定する事が必要だ、と。
確かに日本的な家族制度への移行は目的にされてるわけですが、この時点では別に「姓」をないがしろにしてるわけじゃないんですね。
勿論、この連載の冒頭で述べたとおり、法案の提出理由ってのは良い事しか言わないわけですが、少なくとも「姓不変」や「同姓不婚」については考慮されて法案が策定されてるわけです。
当然戸籍にも朝鮮姓は残ります。

第11條第1項中「裁判上の離縁」

理由
朝鮮に於て慣習上認めらるる裁判上の離縁は、養親より養子に対するものにして、其の原因たる事項は (1)甚しき不孝の行為ありたるとき (2)重罪を犯したるとき (3)家産を蕩盡する虞ありて、相続人と為すに適せざるとき等(略民法第866條第1号、第2号、第4号乃至第8号に規定する事項に該る)なり。
而して、養子より養親に対する裁判上の離縁は未だ其の事例を見ざるも、時勢の推移と権利思想の発達に伴ひ、相互主義に則り (1)養親又は其の直系尊属より同居に堪へざる虐待又は重大なる侮辱を受けたるとき (2)悪意を以て遺棄せられたるとき (3)養親が懲役1年以上の刑を受けたるとき (4)養親が養子の直系尊属に対し虐待を為し、又は之に重大なる侮辱を加へたるとき等(民法第866條第1号乃至第4号、第8号に規定する事項)の事由あるときは、之を離縁の原因と做すを以て相当なりと謂はざるべからず。
婿養子縁組を認むるときは、養子と家女との婚姻をも認めざるべからず。
之等の場合に、婚姻と養子縁組とは相互に重大なる関連を有すべきを以て、民法第866條第9号に則り、離婚は同時に離縁の原因と做すを相当とすべし。
是、茲に改正を要する所以なり。

尚、裁判上の離縁に関する民法第867條乃至第875條の規定は、何れも適切にして慣習と背反する所なきを以て、裁判上の離縁に付ては凡て民法の規定に依らんとす。
養子の離縁は、朝鮮の慣習では養親側からしか出来なかったわけですね。
で、取りあえず原因となる事項は、大体は民法の第866条第1号、2号、4~8号に当てはまる、と。

一方で、現在の所養子から離縁したいとする実例はないものの、時勢の推移と権利思想の発達に伴って有り得るかも知れないわけで、その場合には民法第866条の第1~4号と第8号に規定する事項を離縁の原因とするのが妥当だろうとし、ついでに婿養子縁組の場合、離婚してもそのまま養子である可能性はほとんど無いわけで、民法の第866条の第9条に則って、離婚は離縁の原因とみなすのが妥当だ、と。

ってことで、「裁判上の離縁」が朝鮮の慣習から除かれる事になったんですね。
ちなみに、民法の養子の部分はかなり変わりましたので、当時の民法については16画像目以降に当該条文が載ってますが、擦れてたりで読みづらいので、中野文庫さんからどうぞ。


ってところで、今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)