前回から再開した創氏改名の連載。
朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」を見ております。
その続き。

【画像1】

【1417】
氏の届出受理件数報告記載方

(19.2.58)(昭和15年1月25日各地方法院長、各地方法■支庁上席判事又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


昭和14年本府訓令第77号(朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件)第5條に依る報告には、(イ)氏別件数表、(ロ)職業別件数表の外、左記の表追加提出せらるる様致度。

(ハ)所在地別件数表
 一 鮮内居住者  件
 二 内地居住者  件
 三 満州居住者  件
 四 支那居住者  件
 五 其の他     件
総督府訓令第77号「朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件」も見ないと駄目だねぇ。
宿題が増える。(笑)
兎も角、これによって後に統計資料が作られるんですね。

【画像1】

【1418】
受理すべからざる氏を誤て受理したる場合は、昭和14年制令第20号第1條に該当するものの外、其の儘に為し置くべし。

(19.2.56)(昭和15年2月1、2日釜山地方法院管内戸籍事務協議会決議)


氏の設定に付ては、昭和14年制令第20号第1條の規定以外に制限したる例示多数あり。
斯る氏の届出を誤って受理したるときは、其の措置如何。

決議
昭和14年制令第20号第1條に該当するもの以外は、受理したる以上其の儘と為し置くの外なし。
前回も見ましたが、昭和14年制令第20号第1條以外にも色々と留意事項がありました。
しかしながら、明確な法令違反となる昭和14年制令第20号第1條に該当するもの以外は、受理しちゃったら仕方ないからそのままにしておくしか無いよね、と。
当然の話ではあるんですが、多分過酷な統治の一環なんでしょう。(笑)

【画像1】 【画像2】

【1419】
氏の届出件数報告は本籍人のみにて足る。
外国人式の姓或は従来の姓名を其の儘依用する氏の届出は適法ならず。

(19.2.56)(昭和15年1月26日清津地方法院長稟伺 同年2月6日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義有之に付、至念御回示相煩稟伺す。



一.監督裁判所が氏の届書の送付を受けたるときの訓令第77号附録第4号書式の報告は、本籍人のみにて足れりや。
又は本籍人、非本籍人たることを問はず報告を要するや。
若し然りとせば、本籍人、非本籍人に区別し報告すべきや。

二.氏の届書又は氏名変更の届書竝に更正報告に依り為すべき戸籍副本の更正は、戸籍事務取扱規程第10條に依り戸主の姓の氏名のみにて足れりと思料す。

三.氏の設定に付、外国人式の姓或は従来の姓名を其の儘依用することは、立法の趣旨に反するものと思料す。
然らば、訓令第77号附録第4号書式、氏別、三其の儘の氏、とは前項を除く単に内地人式と認め得べからざるもの(例へば、本貫或は■■地等を用ひたる場合の如きもの)のみを指すものと思料す。


回答

首題稟伺の件、左記に依り了知相成りたし。



一.本籍人のみにて足る。

二.貴見の通。

三.貴見の通(但し、本貫又は■■地の名称を用ひたる氏と雖も、内地人式と見做し得るものも存し得べし)。
1については、先ほどの総督府訓令第77号で報告するのは、本籍が当該監督裁判所管内にある者だけで良いのか、届出を受けたものは全て報告するのかという疑義に対し、本籍人だけでよいよ、と。

次に2。
って、今度は戸籍事務取扱規程を調べなきゃ駄目か・・・。_| ̄|○
現代日本で言えば、戸籍の正本は市区町村で、副本は管轄法務局で保存されている。
新戸籍を調製した場合なんかに、市区町村長が管轄法務局等に副本を送るわけです。
で、氏の届出書や氏名変更の届出書、更正報告によって行う戸籍の副本の更正は、戸主の姓の氏名だけで良いよ、と。
「戸主の姓の氏名」が既に分からない。(笑)
推測すれば、各届出は戸主が行うわけで、それに附随する副本の更正も戸主の分だけで良いよって話だと思うんだけどなぁ。
ま、やっぱり戸籍事務取扱規程か・・・。

続いて3。
氏を設定するに当たって、外国人のような姓や従来の姓名をそのまま使うのは、立法の趣旨に反すると思うんだけど、そうすると総督府訓令第77号の付録第4号書式の氏別の「3.其の儘の氏」って、外国人のような姓や従来の姓名をそのまま使ったものを除く、単純に内地人式の氏以外のもの、例えば本貫や(発祥地?出身地?)等を用いた場合を指すんだと思うんだけど、どうよ、と。
これに対して、その通りだけど、ただ本貫とか使ってても内地人式の氏と見なせるものもあるよね。

後述するけど、前回の金英達の「設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていた」の論拠としては、こっちの方がマシな気がするんだよねぇ。
ただ、文中「姓と姓名」については区別されてるっぽいので、論拠とするに微妙だったのかな?
というか、これも総督府訓令第77号見なきゃ駄目か・・・。

※2008.6.24補記
「三.其の儘の氏」と読んでましたが、正解は「三.其の他の姓」でした。
ついでに、「一.従前の姓と同一の氏」と別途記載あり。
「論拠としては、こっちの方がマシな気」は、気のせいでした・・・。
_| ̄|○


なんか、宿題が増えただけの気もするけど、今日はこれまで。(笑)



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)