疑問点というか、宿題が増えていくばかりの今回の連載。
困った。( ´H`)y-~~
ま、不定期連載って最初から言ってるから、後から悠長に調べてみようっと。(笑)

ってことで、今日も朝鮮総督府法務局編纂『昭和十八年新訂 朝鮮戸籍及寄留例規(朝鮮戸籍協会 1943年12月)』の中から、「朝鮮民事令中戸籍條規及朝鮮戸籍令 附記 第6節 氏の設定」の続きを。

【画像2】

【1420】
従来の姓にして内地人式の読方を為し得るものを氏と為す場合、届出及戸籍記載に之を明にする要なし。
右の如き姓を他姓の者に於て氏と為すことは差支なし。

(19.3.40)(昭和15年1月26日咸興地方法院長稟伺 同年2月6日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義有之に付、何分の御指示相仰度此段稟伺す。



一.林、柳、南、桂の如き姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地人式の読み方を以て氏と為さんとする場合、届出及戸籍記載に付之を明かにするの要なきや。

二.他姓の林、柳、南、桂等を内地人式の読み方に従ひ氏と為さんとするには、昭和14年制令第20号第1條第2項の、自己の姓以外の姓を氏として用ひんとするものに該当すと認め、許すべからざるや。


回答

首題の件、左記に依り了知相成りたし。



一.其の要なし。

二.差支なし。
9月25日のエントリーで取り上げた、金英達著の『創氏改名の研究』における「林、柳、南、桂等の姓を有する者が、林(ハヤシ)、柳(ヤナギ)、南(ミナミ)、桂(カツラ)等内地式の読み方を以て氏と為さんとする場合其の届出の要なきところ」の話とはまた別の話です。

まず1番目。
林、柳、南、桂のような姓の者が、内地人式の読み方で氏の設定を行おうとする場合、届出や戸籍にはその旨書くの?という疑義に対して、いや、イラネ、と。
そもそも戸籍に読みが必要なわけでもなく、さらに理由の記載も要りませんってことでしょうね。
というか、この時点で既に林、柳、南、桂のような姓の者が、そのままで届出する場合について想定されているわけで、「事実上、設定創氏は日本風の氏の設定に限定されていた」とする論拠としてはふさわしくないですな。

次に、他姓の者、つまり金さんや朴さんが林、柳、南、桂等の氏を設定しようとする場合、昭和14年制令第20号第1條第2項「自己の姓以外の姓は、氏として之を用ふることを得ず。」に引っかかるとして、却下なの?と。
これに対しては、いや、問題ないよ、と。
んー、要は林、柳、南、桂等は内地人式の氏と見なされてるって事だろうなぁ。
良く言われる「南太郎」と創氏改名するのって、現場ではどうか分かりませんが、法令上や質疑応答上では不可能ではないんですな。

【画像2】

【1421】
金氏、韓姓女等の称呼を有する女子の家が創氏したるときは、右「氏」、「姓女」等は其の儘に為し置くの外なし。
姓を以て氏と為す場合、姓を朱抹して新に氏を記載する要なし。

(19.3.41)(昭和15年1月25日咸興地方法院長稟伺 同年2月9日法務局長回答)


首題の件に関し左記の通疑義生じたるに付、何分の御指示相煩度此の段稟伺す。



一.金氏、韓姓女等の称呼を有する女子の属する家に氏設定せられ、姓を朱抹したる場合、右「氏」、「姓女」等の処置如何。

二.姓を以て氏と為す場合に於ても、戸主の姓を抹消の上新に氏を記載するを要するや(例へば金 朱― 金某等の如し)。


回答




一.其の儘と為し置くの外なし。
但し、努めて命名届を為さしむる様取計はれたし。

二.其の要なし。
朝鮮の女性に名前が無かったという話は頻出なわけですが、1940年に入ってもやはり無いままの人も居たんでしょうなぁ・・・。
ということで、金氏や韓姓女といった呼び名の女性がいる家が、氏を設定し姓を朱書きで抹消した場合、「氏」とか「姓女」とかどうするよ?という疑義に対して、まぁそのままにしておくしか無いでしょう、と。
勝手に名前付けるわけにもいきませんからねぇ。
ただ、当然その場合には、なるべく命名届を出させるように取りはからってね、と。
まぁ、当たり前の話。

次。
姓をそのまま氏にする場合も、戸主の姓を抹消して新しく氏を記載する必要があるのかという疑義に対してイヤ(゚⊿゚)イラネ、と。
9月25日のエントリーでの戸籍謄本や戸籍抄本の交付を請求による戸籍記載の更正を念頭に置いているのか、この後8月に訪れる法定創氏のための疑義か、姓をそのまま氏とする届出がある事を念頭に置いているのかは分かりませんが、普通に姓を氏とする場合の質疑応答があるってのは、面白いですなぁ。

【画像2】

【1422】
氏設定届の取扱方。

(19.3.45)(昭和15年3月15日各地方法院長、同支庁上席又は一人の判事宛 法務局長 通牒)


府邑面に於ける戸籍届書類の取扱方に関しては従来屡注意を促したる処なるも、尚之が取扱振に付非難の聲を聞くは頗る遺憾とする所なり。
殊に氏設定に関し、職業の記載方又は府尹邑面長の氏名の記載洩、其の他戸籍の記載に支障なき些細なる錯誤遺漏等を理由として届書の返礼を為す向等ありて、届出人の蒙る煩労少からざるのみならず、氏設定届受理の際寄附を強要し、又は氏設定届書の返戻に際し之が戸籍抄本交付手数料を返還せざるが如き事例ありて、半島統治上一時代を画すべき氏制度の運行上、人心に及ぼす悪影響少なからざるものあり。
各位に於ては、一層監督を厳にし、斯る不当の処置なきを期せられたし。

追而■下府邑面戸籍事務管掌者に対しても、右の趣旨伝達相成度。
氏の設定で、職業の記載や府尹邑面長の名前の記載洩れなんかの、直接戸籍記載に関係ない些細な誤記や遺漏で届書の返戻って・・・。_| ̄|○
しかも氏設定届を受理するときに寄附を強要・・・。_| ̄|○
氏設定届書の返戻に当たって、戸籍抄本交付手数料を返還しない・・・。_| ̄|○
_| ̄|○ ばっかりです。(笑)
悪辣な日帝ですね!(笑)

つうことで、そういう不当な処置をしないように一層監督を厳しくし、各所管府邑面の戸籍事務管掌者にもその旨伝達しろ、と。


今日はこれまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
高元勳
朝鮮戸籍及寄留例規(一)
朝鮮戸籍及寄留例規(二)