遠いアメリカで起きた事件のせいか、割と坦々として山場が無い雰囲気の今回の連載。
まぁ、次の連載で何をやるのか、まだ決まってないのでダラダラ行きたいな、と。(笑)

ってことで、今日最初は関連事項の捜査について。
1908年(明治41年)4月5日付『来電第125号』より。

第37号
小池総領事より左の通電報ありたるに付、丸山警視へ移牒を請ふ。

丸山警視より、「スチーヴンス」事件に付管区内に関係者無きや否や返待つとの電報に接せり。
今日迄の処にては、他に関係者ありとも又無しとも断言し難きも、往電第24号の檄文の如きは、兇行者を激せしめたること疑なし。
又、当地韓人は孰れも兇行者に至大の同情を有し居り、直接関係は無きとするも、間接に教唆したる如きことは必ず有之と想はる。
本官は、丸山警視に於て其の管区内に関係者ありや否やを探偵報告あらんことを望む。
勿論、当地に於て何等探ぐる所を得ば、直に報告すべし。
同警視へ可然返電ありたし。

右の電報中に引用せる小池総領事来電第24号は、已に其の当時伊藤統監に通知し置けるも、為念別に電報す。
スチーブンス事件に関して、丸山警視から韓国国内に関係者が居るか居ないか照会の電報を受けたが、今日までのところは他に関係者が居るとも居ないとも断言できない、と。
でも、往電第24号の檄文なんかは、犯人を激昂させたことは間違いない。
直接関係する者は居ないかも知れないが、間接的に教唆したかのような事は必ずあると思われるので、丸山警視に韓国国内に関係者がいるか居ないか捜査して欲しい、と。

で、この犯人達を激昂させたと予測されている往電第24号は、恐らく次の史料と思われます。
1908年(明治41年)4月5日付『来電第38号』。

小池総領事来電第24号
大韓関東倡義将李麟榮及其の他の同国人等の署名の下に、光武11年9月25日の日付にて、世界各地に在住する有らゆる韓国人等に向て発したる檄文の大要、次の如し。

曰く、吾人は一致協同して身命を吾が邦家に献げ、以て国家独立の恢復を企図せざるべからず。
諸子等は、残忍なる日本人等の痛嘆すべき橫暴及悪逆を全世界に訴ふる所あらざるべからず。
彼等は、狡獪残忍にして、実に文化と人道との讐敵なり。
吾人は、全力を盡して総ての日本人を殺害し、其の間牒となり加担者となるもの、及暴戻なる日本兵士等を悉く滅絶せざるべからずと。


別紙(上件英訳文)
Viscount, Sone.

No. 24(Koike Soryoji raiden)
Gist of manifesto to all Corean in all parts of the dated 光武十一年 九月 二十五日 signed 大韓関東倡義将李麟榮 compatriots;We must unite and consecrate ourselves to V.K.Hayashi and restore our independence.
You must appeal to the whole world about grievous wrongs and outrages of barbarous Japanese.
They are cunning and cruel and are enemy of progress and humanity.
We must all do our best to kill all Japanese their spy, allies, and barbarous soldiers.

Hayashi
我々は、一致協力して身命を韓国のために捧げ、国家独立を企図しなければならない。
皆、残忍な日本人等の痛嘆すべき横暴と悪逆を、全世界に訴えなければならない。
彼等は狡猾残忍で、文化と人道の敵である。
我々は、全力を尽くして全ての日本人を殺害し、日本人のスパイとなったり、日本人に加担する者、暴戻な日本兵等を悉く絶滅しなければならない。

ちなみに、この檄文の主張者である李麟榮は、昨年の6月14日のエントリーのとおり、義兵の大将としてソウルに進撃中、お父さんの喪に服するために全部許蔿に委ねて田舎に帰っちゃうんですけどね。(笑)
一致協力して身命を韓国のために捧げるよりも、全力を尽くすことよりも、お父さんの喪に服する事が大事。
他人を煽りまくってこの結末とは、儒者の鏡ですね。( ´H`)y-~~

続いては、11月8日のエントリーで扱った1908年(明治41年)3月30日付『来電第33号』と、前回の1908年(明治41年)4月1日付『往電第20号』に関連する内容。
つまり、検事の要求に基づく資料送付の件について。
曾禰副統監から林外務大臣への1908年(明治41年)4月6日付『統発第2116号』より。

「スチーブンス」加害者裁判上、検事等の参考として韓国の進歩発達を扶けたる事実、并に我対韓政策を非難するの不当なることを弁明すべき材料に関し、去月31日附貴電第33号御請求に対しては、不取敢本月1日附往電第20号を以て申進候処、今般別紙目録の通り本件に就き必要なりと認めたる書類、一括差進候條、御査収相成度候也。


別紙 送付書類目録
一.須氏の直接関係事項
 Administrative Reforms in Korea.
 January,1907
 Summary of the Financial Affairs of Korea.
 Report of the Progress of Reorganization of the Finances of Korea.
 November, 1906.
一.統監府施政一班 (明治40年1月)
一.韓国財政整理報告 (明治38年12月)
一.韓国財政整理報告 (明治40年上半年)
一.韓国政府財政整理報告 (明治39年)
一.巡視報告
一.統監府通信事業第一回報告 (明治39年12月)
一.統監府鉄道管理局年報 (明治39年度)
一.韓国沿道工事に就て
一.監獄制度
一.申訴事件処理規則 (附裁判所及法部関係法令)
一.韓国財政状況
一.韓国裁判制度
一.統監府通信事業の状況
 韓国通信事業の過去及現在 明治40年6月
 第一回統監府通信一覧 明治41年1月
一.韓国の鉄道状況
一.韓国の教育状況
一.大韓医院状況
ちなみに、これら資料は4月9日には発送となったようです。
1908年(明治41年)4月9日付『往電第23号』。

貴電第33号、「スチーヴンス」加害者の裁判上検事等の希望に係る参考書類、一括本日郵送せり。
んー、「韓国沿道工事に就て」とか、「韓国裁判制度」とか、「韓国の教育状況」とか、「大韓医院状況」とか是非見てみたいなぁ・・・。
どっかに転がってないもんかね?(笑)


今日はこれまで。



スチーブンス暗殺事件(一)
スチーブンス暗殺事件(二)
スチーブンス暗殺事件(三)
スチーブンス暗殺事件(四)
スチーブンス暗殺事件(五)
スチーブンス暗殺事件(六)