前回は、1908年(明治41年)5月29日付『機密送第24号』と、その別紙(1908年(明治41年)5月8日付『機密第26号』)の途中までを見ました。

サンフランシスコ在住の韓国人朴鳳來が毎日申報に投稿した事を元にして、彼と大同報及び合同新報との関連性調査の報告で、とりあえずその関連性は否定されましたが、彼の文とされるものは、在米韓国人一般の認識と同じだよ、というところまでですね。
今日はその続きから。
では早速。

彼等は、日本は韓国を併呑するため其政策を遂行する者となすと共に、韓政府の当局者を目するに奸臣賊子を以てし、殊に38年4月の取極書を締結せし李址鎔・朴斉純・李根澤・李完用及沈相薫の諸氏を五賊と目し、40年7月の新協約7條の締結に参与せし李完用・宋秉畯・趙重應・高永喜・李秉武・任善準・李載崑の7氏を七賊と称し、皆私利の為めに国家を売るものとなし、之を観る事蛇蝎の如く、朴の所謂(一)五賊を冒殺し其顛末を看、(二)七賊を弾覈して風雨を避くるの言は、常に彼等の念頭を去らざる処に有之候。
又朴の主意第三、第四に対しては、彼等は日本を以て単に韓国の併呑を期するものとなすのみならず、我が当局者の韓民に対する処置を以て、人道に反し、残虐暴戻到らざる処なきものとなし、韓民は到底日本統治の下に甘んずる者にあらざる事を世界に暴露し、列強の同情・干渉を誘致し、其機に乗じ韓国の独立を恢復すべしとなし、新聞に其他に過激の言辞を弄するを事とし、苟も韓国の真情を説き日本政策の当を称するものあれば、即ち日党と呼び独立の敵と称し居る次第に有之候。
「ス」氏の遭難及此頃帰米したる「ビシヨツプ・ハリス」に対する悪感情等、皆茲に胚胎致居候。
而して、在米韓人の多数は無智の労働者にして、遠く故国を離れ其現状を知るに由なきと共に、愛国の美名に魅せられ彼等煽動者の感化を受け、遂に熱誠なる排日派と化し去るものに有之候。
是等排日運動の主脳たる共立協会・大同保国会(以上在桑港)及合成協会(在ホノルゝ)、並に其新聞の現状は大要左の通りに有之候。
在米韓国人一般は、日本は韓国を併呑しようとしているとして、更に韓国政府の当局者を「奸臣賊子」と見ている、と。
で、乙巳五賊と丁未七賊は、特に皆私利のために国家を売ったとして、蛇蝎の如く嫌っている。
つうか、乙巳五賊が一人違いますがな。( ´H`)y-~~

日本に対しては、韓国を併呑しようとしているとみなすのみならず、韓国人に対する処置を、人道に反し、残虐暴戻が到らないところが無いとして、韓国人は到底日本統治の下に甘んずるものではないと世界に発表し、列強の同情や干渉を誘致して、その機に乗じて韓国の独立を回復しよう、と。
なんか、先日【コラム】「米国は韓国を見捨てるかもしれない」とか見た気がしますね。
いや、深い意味は無い。(笑)

そういうわけで、少しでも日本の肩を持つような者は、日党と呼んで独立の敵と称している有様。
ってことで、今回のスチーブンス暗殺事件や前回のビショップ・ハリスへの陰謀事件なんかも、根っこはそういうところ、と。

でも、在米韓国人の多数は無知の労働者で、韓国を離れてその現状を知らず、愛国の美名にのせられて煽動者の感化を受けて、遂に熱心な排日派になっただけとして、この排日運動の主導をしている共立協会・大同保国会・合成協会とその新聞の現状に移るわけです。

共立協会は、4、5年前の設立に係り、在米韓人間に尤も優勢なる団体にて、本部を桑港に置き、「ロスアンゼルス」、「サクラメント」、「ソートレーキ」、「リバーサイト」、「レツトランド」及「ラツクスプリング」等の地に支部を設け、機関紙として共立新報なる週刊新報を発刊す。
会員は1,000に近しと称すれども其詳細を確むる事を得ず。
団体の目的は、在米韓人の利益を増進するに在りと称すれども、日韓協約の実行以来彼等は熱心なる排日党と化し、日本は韓国の滅亡を計るものとし、愛国の美名を標榜し盛に排日思想を鼓吹す。
新聞は漢文週刊にして、発行数は3,500乃至4,000枚に達し、読者の多数は本国及布哇に在るものの如く、其収入は克く会の経費を支持するに足ると。
目下鄭在寬(黄海道人)之が主筆たり。
其他崔有渉(多年日本に有り、能く日語を解す)(以上2名は、暗殺前夜「ス」氏を「ホテル」に訪問したるもの)、金永一・申興雨(京城培材学堂出身にして、嘗て協成会の会長として時事を論じ投獄せられたる事あり)等、会の機務に参す。
「ス」氏暗殺者田明雲は、此会に属せり。
まずは共立協会。
団体設置の目的からかけ離れて暴走するのは、いつもの事。
日韓協約以来熱心な排日派となり、日本は韓国の滅亡を狙っているとして、排日思想を鼓舞。
発行する新聞「共立新報」は漢文の週刊で、発行数は3,500~4,000枚であり、会の経費を賄うのに充分な程度は売れていたようですね。

主筆の鄭在寬と崔有渉は、暗殺前日にスチーブンスを訪問した者。
田明雲も共立協会に属している、と。

大同保国会は、2、3年前の創立に係り、本部を桑港に置き「サクラメント」及「カーリン」等に支部を置く。
其目的は共立協会と差なく、是亦大同公報なる諺文週刊新聞を発刊す。
是れ迄、共立協会と軋轢の姿なりしも、排日思想の一層其度を進むると共に、次第に接近の兆あり。
本会は、目下頗る財政困難の域に在り、其新聞の如きも発行数1,500に過ぎず能く其経費を支持するに足らず、現に4月9日以来休刊中にあり。
会員中には李一(京城外国語学校卒業生)、文譲穆(以下2名は前記鄭及崔と共に「ス」氏をホテルに訪ひたるもの)、白一圭(平壌人)等あり。
最も過激派に属し、「ス」氏暗殺者張仁煥は此会員なり。
大同保国会について。
2、3年前の設立という部分と名前からして、恐らくは日韓協約の後に出来た組織だと思われます。
で、最初のうちは、加藤増雄に書かせれば多分「韓国人の常として」、共立協会と軋轢があった、と。(笑)
しかし、排日思想が進むにつれて、徐々に接近している兆しがあるんですね。
敵対してても反日で合致するってのは、これまた良くある話。

大同保国会は、共立協会と違って財政困難であり、機関誌も売れ行きが悪くて経費を捻出できず、4月9日から休刊中、と。
で、こっちも李一や文譲穆といった、暗殺前日にスチーブンスを訪問した者が居り、張仁煥がこの大同保国会の会員なんですね。

合成協会は在布哇韓人の結社にして、其目的は国権を恢復せんため合心協力して患難相救ひ、教育を発達せしむるに在りと称し、其所謂国権恢復なる者は明に排日を意味するものにして、合成新報なる機関紙を発行す。
諺文週刊にして朴一三なる者、之が主筆たり。
鄭源明(会長、平壌人)、李來洙、劉漢膺、李致聖等会務を主宰す。
合成協会はハワイの組織で、最初から国権回復が目的だった組織で、合成新報というハングル新聞を出してる、と。
まぁ、こっちはハワイなんで、直接今回の事件には関係しないんでしょうけどね。

以上3会相互間、並に在韓排日派との連絡に関しては、未だ確実なる機関又は協約あるを聞かず、互に事に触れ時に当り他を利用せんとするに過ぎざるものの如し。
要之以上3会とも独立能く大事をなす足らず、其新聞の如きも見るべきものなく、殊に外国の干渉を喚起云々の如き殆んど児戯に過ぎずと雖も、而も彼等は何等言論の羈束を受けざるを奇貨とし煽動的過激の言辞を弄して憚らず、而して読者の識見卑きため悉く其言辞に魅せられ、其心裏に拭ふべからざる排日の思想を印するに至る義に候。

別紙最近当地韓新聞5枚相添へ、右及報告候。
敬具
これら3つの会相互や、韓国の排日派との連絡は、まだ確実なルートや協約はなく、お互いに折に触れて他者を利用しようとしているだけ。
3会とも、用は足りない、新聞も見るべきものは無い、外国の干渉を喚起とかもう児戯に過ぎないと、ケチョンケチョン。(笑)
しかし、彼等は何も言論の拘束を受けずに好き勝手な煽動や過激な言辞を使って憚らず、読者は識見が卑しいからその言葉に魅せられて、その心に拭えない排日思想を刻み込むに至った、と。

何つーか、昔から変わらねーなぁ。(笑)


今日はこれまで。



スチーブンス暗殺事件(一)
スチーブンス暗殺事件(二)
スチーブンス暗殺事件(三)
スチーブンス暗殺事件(四)
スチーブンス暗殺事件(五)
スチーブンス暗殺事件(六)
スチーブンス暗殺事件(七)
スチーブンス暗殺事件(八)
スチーブンス暗殺事件(九)
スチーブンス暗殺事件(十)