うー、ちょっとしか関係ないのに長い・・・。(笑)
ってことで、前回からお送りしている、1908年(明治41年)11月25日付『高秘発第17号』の続きを、ちょっと長くなりますが最後まで一気に見ていきたいと思います。
では、早速。

一.李範允等は咸鏡北道に於ける日本軍隊警察等の動静を探知するに力め、日本人1人を殺害するときは金15円の賞金を与へ、現に其賞を受けたる者あり。
日本人1人を殺害すれば、15円の賞金。
「日本兵」では無いところが、テロ組織っぽくて良いですなぁ。( ´H`)y-~~

一.居住韓国人の全部は排日者なりと云ふも、多くは下等労働者にして政治上一定の見識を有する者あるなく、素より日本に信頼して其保護を仰がんとする者あるなしと雖も、亦衷心日本排斥を鼓吹する者は僅々一部の者に止まるものの如し。
又、露国官憲の援護あり、若くは露国人の暴動に干係するは同国官憲の指導に出づるものの如く云ふ者あるも、其干係者は概ね無頼の徒に過ぎず、且李範允等が人心収攬上故造の言を流布するものなりとの説、真に近きが如し。
現今に至りては、居住民中却て匪徒を喜ばず、寧ろ李範允を殺し紛擾を断たざるべからずと主張する者を生じ、匪徒に対する態度一変の徴なきにあらず。
此際一大打撃を加ふるときは、或は終熄の期に近づかしむるを得べしと。
この辺、11月15日のエントリーの在米韓国人への指摘と、あまり変わりませんね。
で、ロシア官憲の援護や指導を受けているかのように言う者があるが、単なる無頼の徒であり、李範允なんかが人心収攬の為に流した捏造話ってのが本当の処だろう、と。

一.李範允等は、軍資金と称し居住民より金円糧を徴発し、誅求を極むるより、現今に於ては却て怨府となりたるの観あり。
然れども、其徴発金頗る多数に上り、一時李範允は馬車を駆り、数十の護衛騎兵を従へ各地に往来し、浦鹽に至るや常に最上の露国人「ホテル」に宿泊し、驕奢を極め居りしことありと。
李範允は、軍資金と称して住民から金や食料を徴発し、厳しく取り立てるので、今では却って恨みの的に。
しかし、その徴発した金が多額に上り、一時李範允は馬車に乗って数十人の護衛騎兵を従えてあちこち行ったり来たりし、ウラジオストックではいつも最高のロシア人ホテルに泊まって贅沢を極めている、と。
まぁ、なんつうか、想定の範囲内。(笑)

一.海牙平和会議に現はれたる李瑋鐘は、父李範晋より暴動資金1万円を得て、本年3月頃浦鹽港に来りしが、其中約金2,500円を酒食の費に使用し、為めに声望を失墮し、月を越へて露都に去れり。
はい、これが以前「ハーグ密使事件関連史料(八)」で抜粋した部分です。
日本人1人殺して15円。
李瑋鐘は、酒飲んだり飯喰ったりで2,500円浪費。
167人の日本人殺して、やっと貰える分を飲み食いに使ったら、声望を失墜するのも当たり前ですわな。( ´H`)y-~~

一.田明雲は、本年9月下旬浦鹽港に現はれたり。
其来浦の要件は、在米韓国人との連絡を取らしめんが為なり。
或は、弾薬を輸送し来りたるものなり。
或は、「スチーブンス」氏暗殺事件は無罪となりたるも、全部の裁判未だ終了せず、其桑港に在住するは却て共犯者の裁判に不利を来すを以て、弁護士の勧告に従ひ、踪跡を晦ましたるものなりとの3説あり。
其孰れに属するや分明せざるも、目下露語夜学校に通学し居るより推せば、永く滞在の状あるものの如し。
而して同人来浦以来、居住韓国人間に数回の歓迎会を開催せり。
今回の長い史料の中で、本題その2の部分。
田明雲がウラジオストックに来たのは1908年(明治41年)の9月。
来訪理由は、在米韓国人との連絡のためとか、弾薬輸送とか、無罪になったけど張仁煥の裁判に影響があるから等の3つの説があり、本当のところは分からないけれども、ロシア語学校に通っているから長く滞在するんだろう、と。

一.「ノウオスコエー」と豆満江との間に哈升■溝なる処あり。
附近一体の地は崔都憲の所有地にして、韓人家屋のみ約30戸あり。
暴徒の臨時集合所又は出張所とも云ふべく、咸北に於ける偵察は実に此地に齎らざるるものなりと。
崔都憲って安重根の親玉で、この年の7月には図們江附近での戦闘に部下としてに参加してます。
後に崔都憲と争論になった安重根は、李範允に鞍替えするわけですが、この時点では特記事項なし。

一.浦監港在留韓国人は痛く同国人の出入に注意し、殊に新渡来者の行動を視察牽制し、韓人町には発令官、訊問官なるものを置き、其下27名の巡検なるものを附属せしめ、此等一切の事務を処理せしむ。
而して、同胞中挙動怪むべき者若は利益相反する者あるときは、事実を誣ひて露国憲官に告げ、其甚だしきは往々惨殺することありと。
蓋し如斯同胞を猜疑するは、政府若くは日本の為めに探偵に従事する者の渡来を防禦するにありと云ふ。
日本や韓国政府の密偵を疑って、ウラジオストックに出入りする同胞の行動を視察牽制する韓国人。
挙動の怪しい者は兎も角、利益が相反する者についてもロシア官憲に誣告。
甚だしい場合には、惨殺することもあったらしい、と。

尚、以上の情状を齎らしめたる視察者の意見に曰く、
李範允等の行動は、必しも衷心愛国の念に駆られて義を唱ふるものと見るべからざるものあり。
蓋し李範允は所謂政治破落漢にして、一定の業務なきものなるを以て、今日は彼に於ては食を獵るの好機会に遭遇したるものにして、陽に義を唱ふるも実は糊口の策に出るものと謂ふべし。
彼は、昨年8月以前に於ては、僅に崔都憲設立の学校教師として可憐の生活を為したるに過ざりしが、一度名を藉り義を唱ふるや、怱ち馬車に乗じ護衛を伴ひ附近部落を橫行し、時に浦港に出でて豪奢を極め、遂に崔都憲の為めに金銭出納に関する権限を奪はるるに至れり。

崔才亨(都憲)と雖も亦、私利の為めに暴徒に加担したるものの如し。
蓋し彼は多少の貨財を軍資として醵出したりと雖も、彼は之に依て大に虚名を博したるのみならず、暴徒に対する金銭の出入は皆彼の手中よりし、韓人より集めたる所謂軍資金は総て彼の保管する処にして、彼が之に依りて得る処の利益、決して尠少のものにあらずと云ふ。
即ち李範允及崔才亨にして既に此の如し。
況んや、其幕下の者に於てをや。
名を義に藉りて糊口の資を得るものと謂ふべきか。
彼等と雖も烏合の衆を集めて敢て日本兵に抗せんとするの愚を知らざるにあらず。
彼等が時に豆満江を渉りて少数の匪徒を送る所以のものは、却て一般人民を欺瞞するの策にして、此少数の者を以て敢て成効し得べしとするにあらざるなり。
只出金者に対する申譯にして、全く詐欺手段に出づるに過ぎず。
故に其服裝を飾り、其声を大にし、附近同志の耳目ヲを惹かんことに力め、殊に其咸鏡道に入らんとする匪徒に対し奨励至らざるなく、日本人一人を殺害する者に15円の懸賞を為す所以なり。
彼等は常時進出を声言し大に為すあらんとするものの如く装ふも、而も容易に出でず、彼等の策や推して知るべし。

彼等は既に糊口の為めに之を為す。
彼等が金銭を集め得る手段の存する間は、彼等の行動の止むときなかるべし。
故に今日の儘推移せんが、到底本年にして鎮定を期し難かるべし。
或大打撃を与へざる限りは、彼等の行動は比較的永く継続すべし。
聞く処に依れば、目下農作物の収穫期に属するを以て、匪賊の一部を帰家せしめたりと。
彼等が義の為めに兵を挙ぐるにあらざることを知るに足る。
又彼等は、仮令日兵に勝ち能はずと雖も、若し今日の形勢を永く保持せば、必ず諸外国の同情を得、日本を攻撃するの時機あるべし。
吾等の目的は、実に此に在りと云ふが如き。
一面に於て彼等が持久の意思を存することを推知すべし。

露国地方官憲は、李及崔等が一定の服装を為し、隊を組み、旗を樹て、公然行動するに拘はらず、敢て之を取締ることなく放置したりしが、本年8月頃より多少注意するに至りたるものの如く、例へば8月10日頃、李範允が馬車に多数の護衛兵を附し、揚々として「ポセツト」に至りしが、其帰路に於ては大に其態を改め、護衛兵を撤し、夜陰に乗じ急行したるが如き以て、露官憲が干渉の端を開きたるを見るべく、李範允が身を烟秋河に避け、又西水羅に日本漁夫を襲撃せし厳仁燮が「ノウオキエフスキー」にて白昼活歩を慎むが如き、又申譯的にもせよ8月頃より露国管内の於ける旅行券を有せざる韓人の検挙に着手し、「ノウオキエフスキー」警察にては40余名を捕へ、之を韓国政府に交付することとなりたり。
而も彼は、真心之が取締を為すにあらず。
8月23日之を咸鏡北道慶興府に交付するに当りては、僅に3人に過ぎずして、其余の37名は逃亡行衛不明となりたりとは、豈に驚くべき怪事にあらず。
又、其後8月30日頃70名を市監獄に投じたりと称するも、尚未だ之を送還し来らざるなり。
聞く処に依れば、豆満江岸「ホトコロナヤ」の守備兵及其附近数ヶ所に出せる監視兵の如き、元来匪徒等と交際し、匪徒より出せる偵察隊は此哨所に立寄りて歓談し、時々互に賭戯を試み飲食を共にする等のことあるが故に、監視の配置は只其名を衒ふに過ぎざるものの如しと云ふ。

「ノウオエスキー」市にては、在住韓人も亦市費を負担し、崔都憲の如きは有力なる市会議たり。
故に同市の警察其の他の官憲に於ても、匪徒の行動に就き表面多少の取締を為すと雖も、必ずしも総督の厳訓を奉じて誠実に之を執行するの事実なきが如し云々。
まとめの部分なんで、一気に引用してみました。
細かく挙げてくのもアレなんで、簡単にまとめると、要するに彼等が義兵とか何とか活動しているのは、金のためだ、と。
勿論、軍資金募金詐欺行脚でも見られたとおり、この後口先だけだってのがばれて、たちまち生活に窮するわけですが。
( ´H`)y-~~


今日はこれまで。



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