さて、前回で既に主眼だった李承晩がどうなったかという件に関しては、1899年(明治32年)1月3日付けで中枢院議官を免官になりました、ってことで終了したわけですが、史料はまだ終わってませんので、最後までやっちゃっておきたいと思います。

それでは今日も、アジア歴史資料センター『公文雑纂・明治三十二年・第六巻・枢密院・枢密院、宮内省・宮内省、外務省一・外務省一/朴泳孝召還ノ建議ニ関シ其後ノ成行等ニ付在韓加藤公使ヨリ報告ノ件(レファレンスコード:A04010049600)』の中から、1899年(明治32年)2月13日付『送第35号』の別紙を。

服制の改正

本年1月1日、官吏の服制改正に関する詔勅を発せられたり。
曰く、「朝臣服章の従前より変通屡になり、蓋し時に因り宜を制し、務めて簡便に従ふに由る。
而更張以後、多くは未だ揆るに表章を以てするに遑あらず。
尚ほ周備を欠くあり。
其れ掌禮院をして祭禮・賀礼・燕禮を除くの外、古今の制式を参酌し、亦各国通行の規に倣ひ、磨錬して以て入れよ」云々。
而皇帝陛下は、既に其向へ洋服新調の御兆ありたる由に聞く。
役人の服装は以前から何度か変わり、丁度良い時期になるべく簡単にしなければならないと思ってたんだけど、改革後も着手できなかったんだよね。
まだ服装の形式揃ってないからさ、掌禮院で祭祀や祝い事や宴会の礼式以外は、昔や今の服制を考えて、また各国で一般的に行われてる規定も模範にして作りなさい。かな?

で、高宗本人は既に洋服新調してるらしい、と。
つうか、金無い国が金無い時に、体面ばっかりに拘って金使うって・・ねぇ?(笑)

服上疏手続の規定

近来上疏の手続なきため、濫疏するもの日に多きを加へ煩■に堪へずとて、皇帝陛下は其規程を設くべき旨御下命ありたるより、議政府は之に関する調査を遂げ、去る4日議政府参政徐正淳より上奏し裁可を得たり。
其規程は左の如し。

一.勅任官は現任と前任とを論ぜず、碍げなく陳疏するを得。
一.現に奏任官を帯るものにして若し事を言はとする時、其長官に請ひ、長官の手を経て代奏し、或は具案を以て政府に請議するを要す。
一.曾て奏任官を経たるもの及士庶人にして事を言んとする時は、中枢院の議を経由せしむ。
一.勅任官以下の官員及士庶人にして、若し弾劾を欲するときは、必ず証拠の確鑿■るを須く然る■案を具し、高等裁判所に送呈し、其法を案じて懲罸するを要す。
上疏の手続きがちゃんと決まってないため、みだりに上疏する者が段々増えてきてごたごたしてきたので、高宗は規程作れと命令。
これを受けて議政府は調査し、4日に上奏して裁可を得た、と。

内容は、一度でも勅任によって任命された官吏は、何の問題も無く上疏可。
奏任で任命された現任官吏は、その長官経由で政府に請議。
前に奏任で任命されたことのある官吏と士人や庶人は、中枢院の議決経由。
この辺は、所謂請願なんかと似てるのかな?
んで、勅任官や現任奏任官以外が弾劾するときは、証拠等を添えて高等裁判所行きで裁判する、と。

この上疏というシステム、割と自慢気に話す韓国人が居たりするんですが、これ見てどう思うんでしょうねぇ?(笑)

露官入京

新任露国公使パウロウ氏(Pawlow)は、其■と同国■■艦マンジスル号に搭じ、前日来駐剳韓国公使李夏栄氏は其一行を率ひ去る7日帰京せり。

右及具報候。
敬具
1899年(明治32年)2月7日、新任ロシア公使パブロフ到着、と。

さて、今回の史料で、万民共同会の運動が具体的にどのように衰退していったのかが分かると共に、李承晩が1899年(明治32年)1月3日に中枢院の議官を免職になった事が分かりました。

で、逮捕されたのは何時で、本当の罪は何なんでしょう?
さっぱり分かりません。(笑)


「帝国の迷走」第二期、おしまい。



帝国の迷走(一)  帝国の迷走(二十一) 帝国の迷走(四十一)
帝国の迷走(二)  帝国の迷走(二十二) 帝国の迷走(四十二)
帝国の迷走(三)  帝国の迷走(二十三) 帝国の迷走(四十三)
帝国の迷走(四)  帝国の迷走(二十四) 帝国の迷走(四十四)
帝国の迷走(五)  帝国の迷走(二十五) 帝国の迷走(四十五)
帝国の迷走(六)  帝国の迷走(二十六) 帝国の迷走(四十六)
帝国の迷走(七)  帝国の迷走(二十七) 帝国の迷走(四十七)
帝国の迷走(八)  帝国の迷走(二十八) 帝国の迷走(四十八)
帝国の迷走(九)  帝国の迷走(二十九) 帝国の迷走(四十九)
帝国の迷走(十)  帝国の迷走(三十)  帝国の迷走(五十)
帝国の迷走(十一) 帝国の迷走(三十一) 帝国の迷走(五十一)
帝国の迷走(十二) 帝国の迷走(三十二)
帝国の迷走(十三) 帝国の迷走(三十三)
帝国の迷走(十四) 帝国の迷走(三十四)
帝国の迷走(十五) 帝国の迷走(三十五)
帝国の迷走(十六) 帝国の迷走(三十六)
帝国の迷走(十七) 帝国の迷走(三十七)
帝国の迷走(十八) 帝国の迷走(三十八)
帝国の迷走(十九) 帝国の迷走(三十九)
帝国の迷走(二十) 帝国の迷走(四十)