実はこの間から、ゴールデンウィーク真っ最中につき旅行中だったりして。
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実はこの間から、ゴールデンウィーク真っ最中につき旅行中だったりして。
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レス等は、旅行から帰ってからってことで。

さて、今日もアジア歴史資料センター『大正十二年九月・関東戒厳司令官命令通牒告諭(レファレンスコード:A03032035800)』から。
8~9ページ目。
1923年(大正12年)9月3日付『関東戒厳司令官命令第1号』より。

第1号
関東戒厳司令官命令

本年勅令第401号施行に関し、警視総監、関係地方長官及警察官、竝郵便局長及電信局長は、勅令第401号施行地域内に於て、本司令官の管掌の下に左の諸勤務を施行すべし。
但し、之が施行は、罹災者の救護を容易にし、不逞の挙に対し之を保護するを目的とするを以て、よく時勢の緩急に応じ、寛厳宜しきに適するを要す。

一.警視総監及関係地方長官竝警察官は、時勢に妨害ありと認むる集会、若くは新聞紙・雑誌・広告を停止すること。

二.警視総監及関係地方長官竝警察官は、兵器・弾薬等、其の他の危険に亘る諸物品は、時宜に依り之を検査し押収すること。

三.警視総監関係地方長官竝警察官は、時宜に依り出入の舩舶及諸物品を検査すること。

四.警視総監及関係地方長官竝警察官は、各要所に検問所を設け、通行人の時勢に妨害ありと認むるものの出入を禁止し、又は時機に依り水陸の通路を停止すること。

五.警視総監及関係地方長官竝警察官は、昼夜の別なく人民の家屋・建造物・船舶中に立入、検察すること。

六.警視総監及関係地方長官竝警察官は、本令施行地域内に寄宿する者に対し、時機に依り地境外に退去を命ずること。

七.関係郵便局長及電信局長は、時勢に妨害ありと認むる郵便・電信は、開緘すること。

大正12年9月3日
関東戒厳司令官 福田雅太郎
中身としては、5月2日のエントリーで見た戒厳令第14条の話ですね。

この命令に関して、日弁連では「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」の中で、

9月3日の関東戒厳司令官命令は、戒厳令にもとづく命令の施行の目的として、「不逞の挙に対して、罹災者の保護をすること」 を挙げ (資料第2の2 関東戒厳司令官命令第一号前文 『関東大震災 政府陸海軍関係資料Ⅱ巻陸軍関係史料』 139貢)、不逞の挙を行うものを想定している。
として、

これらは、大地震という自然災害に際しての救難・復旧などに通常必要な対応の水準を超えて、騒擾その他の犯罪行為を予防・鎮圧する治安行動的な対応を意味している。
なんて言っちゃうわけですが、流言飛語は既に発生してますし、この「不逞の挙」は特に朝鮮人や中国人を指しているわけでもなく。(笑)

蛇足というか、結論先行に過ぎるんじゃないかと。( ´H`)y-~~
まぁ、他の史料も色々漁らないと駄目なんですが、国の責任にしたくて必死になってる気もします。

ってことで、同じく『大正十二年九月・関東戒厳司令官命令通牒告諭(レファレンスコード:A03032035800)』の11~12ページ目より。
1923年(大正12年)9月3日付『関東戒厳司令官告諭』より。

今般、勅令第401号戒厳令を以て、本職に関東地方の治安を維持するの権を委せられたり。
本職隷下の軍隊及諸機関(在京部隊の外、各地方より招致せられたるもの)は、全力を盡して警備、救護、救恤に従事しつつあるも、此際地方諸団隊及一般人■も亦極力自衛、協同の実を発揮して、災害の防止に努められんことを望む。
現在の状況に鑑み、特に左の諸件に注意を要す。

一.不逞団体蜂起の事実を誇大流言し、却て紛乱を増加するの不利を招かざること。
帝都の警備は、軍隊及各自衛団に依り既に安泰に近づきつつあり。

二.糧水欠乏の為、不穏、破廉恥の行動に出て、若は其分配等に依り秩序を紊乱する等のことなかるべきこと。

右告諭す。
この段階で既に流言は問題視されているようで。
まぁ、「蜂起の事実を誇大流言」ですので、有ること又は有ったことが前提になっているようです。
震災発生からまだ2日で、ラジオもテレビも無く、電信も電話も寸断されている状況では、正確な情報が掴める筈も無いですからねぇ。

さて、次は様々な対応策に関する閣議決定について。
『公文別録・内閣・大正十二年~昭和十九年・第一巻・大正十二年~昭和八年/震災ニ付テノ処置ヲ為スコトノ件(レファレンスコード:A03023581000)』より。
1923年(大正12年)9月4日付『閣甲第143号』。

今回の震災に付ては、不取敢別紙の通処置を為すことに閣議決定相成然るべしと認む。

一.千葉県習志野及下志津演習廠舎に、1万5,000人を容るべきこと。
一.陸軍テントは、戒厳司令官と協議の上取計ふべきこと。
一.バラックは、工兵に建築を託すること。
一.材料は、救護事務局に於て徴集支給すること。
一.米さへあれば炊出し得ること。
一.近傍師団より軍隊食糧パンを給与すること。
只今約2万人分到着。
一.焼残米は見込なきこと。
糧秣廠の分は試験済。
一.宮城前は、テント至急著手のこと。
一.暴利取締は厳重に施行のこと。
農商務大臣主任
一.警察の力にて、鮮人を一団として保護使用すること。
一.軍隊に於て自治団、青年団の凶器携帯を禁じ、必要の場合には差押のこと。
一.臨時焼場を設置し、機宜の処置として軍隊の力にて戒厳的衛生の処分に任ずべきこと。
赤十字社派出のこと。
一.火災保険金の支出能否を審議決定すること。
一.銀行を開くに就き、軍隊の援助を求むること。
一.宮城前の外、新宿御苑、深川内省用地等を開放すべく思召仰出されたる趣のこと。
一.土地の選択は、戒厳司令官に任ずべきこと。
一.鮮人、浮浪人は、習志野に之を集むること。
一.外国人は、大使館員限パンを供給すること。
一.宮内庁の木材は、一般的に材料として御下賜相成ること。
一.朝鮮総督、台湾総督及関東長官へ実情及経過を電報すること。
追て詳報すること。
一.下関に於て朝鮮人入国を拒絶すること。
朝鮮総督に此迄通報のこと。
一.朝鮮人保護の方法を講じ、一団として習志野に安全に居住せしめ、任意労働に従事せしむべき方法を講ずべきこと。
一.モラトリユーム1ヶ月限支払臨時停止施行に付、関係省に於て攻究のこと。
但し、銀行預金は除外例として、1回100円限り支払を認むること。
「警察の力にて、鮮人を一団として保護使用すること」とか、「軍隊に於て自治団、青年団の凶器携帯を禁じ、必要の場合には差押」とか、「鮮人、浮浪人は、習志野に之を集むること」とか、「下関に於て朝鮮人入国を拒絶すること」とか、「朝鮮人保護の方法を講じ、一団として習志野に安全に居住せしめ、任意労働に従事せしむべき方法を講ずべきこと」。

色々と面白い事が閣議決定されてますね。(笑)


今日はここまで。



関東大震災関係史料(一)
関東大震災関係史料(二)
関東大震災関係史料(三)