前回の体たらくについてお盆だからと自分に言い訳しながら、今回のエントリーを書いてますが、何か?
( ´H`)y-~~

さて、前回は漢字ハングル混じりの大量条文を目の前に、途方に暮れたまま終わりました。

刑法大全

でも、こんだけメジャーっつうか大事な法律になると、一所懸命に史料探せば何とかなるもの。
国立国会図書館近代デジタルライブラリーで、丁度良い史料を見つけました。
1910年(明治43年)に出された、『日本警察法規大全』[第2冊]増補第2版 下(宮原久吉編)
この、720コマ目からが刑法大全の日本語訳になっており、1908年(明治41年・隆熙2年)7月23日法律第19号での改正後の条文になっておりますので、それを利用して、特に「笞」が記された条文を抜き出して見ていきたいと思います。

ま、今日のエントリーも「『大明律』からあまり進歩して無ぇ」という事さえ理解していれば、読み飛ばしても構いません。(笑)

んでは早速。
まずは第56条ですね。
執刑は、笞刑は決笞、禁獄は監獄に囚禁するもの、懲役は役に就くもの、流刑は配所に押付するもの、死罪は絞首刑に処するもの言う、と。
用語の定義ですね。

続いて第93条の主刑の区分。
主刑は、死刑・流刑・役刑・禁獄刑・笞刑の5つに区別する、と。
8月10日のエントリーの『法律第3号 刑律名例』からは禁獄刑(禁錮刑)が増えた形になっています。

で、注目の第98条
笞刑は小荊條(小さな棘のついた枝?)でケツを打つ。
回数は10回~100回の10段階。

笞は、長さは周尺で3尺5寸、大頭徑2分7里、小頭徑1分7里のもの、と。
たまに日本なんかの尺度、1尺=約30.3cmで計算しているサイトを見かけますが、「周尺」ですので、1尺=約22.5cmくらいで計算しなきゃ駄目。
ってことで、約78cmくらいの長さで、一番太い所で約6cmくらい、一番細い所で約4cmくらいっすかね。
実はこれ、明代の笞の規定と同じだったりするわけですね。

次に出てくるのが、第133条。
刑期中にまた罪を犯した場合、その犯罪が前のものより重い場合は刑期上乗せドン!で、軽いものは笞100回をプラスと。

第178条は、禁獄刑と笞刑は収贖することが出来る、と。
この時も笞刑メインで罰金補助の形なんですね。
で、第182条がその収贖の値段。
笞刑1回につき10銭。
制定当初は笞刑1回につき3銭5分で、8月10日のエントリーの『法律第3号 刑律名例』では銅銭1両4銭でした。
さて、高くなったのか安くなったのか。(笑)

次が第244条。
近侍する官吏が機密事項を漏洩した場合には、終身流刑。
軽い話を漏洩した場合には、笞100回。

第249条は、正式な雇用契約や任命などを行わずに公務を委任する事に対しての刑罰。
法を曲げて嘱託を行い、それがまだ実施されていない場合は笞50回。
やっ ちゃったら笞100回。
既にやっちゃった場合で、他人や親族のために嘱託した者は官吏の罪から3等(笞刑の場合30回)を減らし、自嘱した者は1等(笞刑の場合10回)を加算、と書いてはみたものの、この第2項は良く理解できてません。(笑)
で、監督者の場合は施行・未施行を問わず笞100回。
以下はちょっと省略。

次が第250条なんですが、ぶっちゃけ第249条と何が違うのか分かりません。(笑)
官吏が嘱託するのを許可したら笞50回で、実施しちゃったら100回。
以下略。

第251条は、地方官吏が部民を私役したり、一般人に役務をを強要したり、雇って働かせたのに金を払わなかったりした者は笞40回で、その使役した人が1人増える毎に10回増やしていき、上限100回。
雇い賃を計算して追給する、と。

第252条は・・・憑標って何だよ・・・。(;´Д`)
取りあえず、給与しなきゃ駄目な人に給与しなかったり、給与しちゃ駄目な人に給与した場合には笞100回で、給与しちゃ駄目な人に給与して、その人が国外逃亡したら懲役3年。

次の第265条は、要するに行政財産や公有財産を勝手に使ったら笞100回で、それが禁物だったら懲役3年。
第266条は、司法官でも無いのに訴訟を受理したら、笞100回。

第286条は誣告罪の話。
2つ以上を告げた時、重い罪話は本当で軽い罪の方は嘘だったり、2つとも罪になるのに1つだけしか告げなかったりしても免罪。
軽いことが本当で重い方が嘘だったり、嘘を吐いて罪を重く見せかけたり、2人以上がやったのに1人だけについて述べたりした場合、嘘吐いて増えた分の罪と同一程度の刑を併せて科す、かな?。
次の肝心の「笞」が絡むところ、全然わかんね。(笑)
(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)
で、もしすでに罪状が決していれば加算した罪には全て刑を執行し、未決なら笞刑は収贖し、禁獄または流刑・役刑は一等を笞20に換算し、笞刑100に止める、と。

次は第292条なんだけど、これも難しい。
要するに、刑に服した囚人の親族が冤罪だと詐称して訴えたら、笞100回を上限に囚人の罪から3等を減らした分の罪に。
囚人自身が冤罪だと言って、原問官吏に無実の罪を着せようとしたら、その誣告の罪に3等を加える、かな?
やっぱり良く分かんね。

第293条は、獄官や使役が、刀等や拘束具を外す道具を囚人に与えたら、笞100回。
それで自分を傷つけるか、又は人を傷つけちゃったらプラス懲役1年。
囚人が自殺に至っちゃったら懲役2年で、逃げちゃったら懲役15年を上限にその囚人の刑を受け、反獄や殺人をするに至っちゃったら終身刑。
逃がした罪を問われる前に、他人が捕まえたり自首してきたら1等減。
自分で捕まえれば2等減。
それが親族や雇工や常人であれば、1等が減らされる、と。

第297条。
官吏が追っかけてる罪人を、途中で奪えば懲役15年。
そのために人を傷つけたら終身刑で、殺人を犯せば第479条の闘殴殺人律で処断。
10人以上集合してやったら、主犯は人を傷つけようがそうでなかろうが関係なく絞首刑。
従犯で手を下した者は終身刑。
それ以外は笞100回。

第303条では、流刑や役刑、禁獄刑に服す期間中に逃亡したら笞100回。
当たり前だけど、逃げてる間は刑期に含まない。
流刑や役刑、禁獄刑を受ける場所に到達する前に逃げた場合も同様。

第304条。
囚人を監獄の外に連れ出すか、枷鎖を自解いたら笞30回。
それで逃げたら受けてる刑に2等追加。
他の囚人を解放したらその囚人と同罪にして、それが受けてる刑より軽ければ、受けてる刑に2等追加。
但し、監獄内で暴行や脅迫によって逃亡した者は、主犯従犯関係なく絞首刑、と。

第318条は、司法官が訴状を受理しない場合の罰則。
2~5が笞刑に該当するもので、それぞれ親族を殴打又は殺害した事の訴状を受理しなければ笞100回。
殺人や強盗の訴状を受理しなければ笞90回。
闘殴婚姻田宅川等の訴状を受理しなければ、笞80回を上限にその犯人の罪から2等を減じた刑。
婚姻田宅や、その他民事訴訟に止まる訴状を受理しなければ笞30回。
つうか、婚姻田宅って何よ?(笑)

第320条は、刑罰執行に関して。
執行官が罪人に刑罰を与える際、受けるべきじゃない罪人に打ったり、受けるべき罪人であっても大杖で打ち据えたりした者は笞40回。
それによって死に至らしめたら懲役3年。
って、刑期短すぎじゃね?(笑)


ということで、約半分を終わらせて、今日はここまで。



笞刑に関する整理(一) ~序~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(1)~