刑法大全の条文の話で、無意味に長くなってるわけですが・・・。
まぁ、今回も興味無い人は読み飛ばしちゃってもOKです。

刑法大全

さて、前回まで国立国会図書館近代デジタルライブラリーから、1910年(明治43年)の『日本警察法規大全』[第2冊]増補第2版 下(宮原久吉編)を使って、1905年(明治38年・光武9年)2月29日『法律第2号 刑法』、所謂「刑法大全」の「笞」が見える条文について、第436条までを見てきました。
今日は738コマ目の第437条から。
城や宮墻等を越えた罪のうち、4番目の各部牧郡城を越えれば笞100回と、5番目の各公廨墻垣を越えれば笞80回が該当部分。
いや、各部牧郡城と各公廨墻垣が、具体的にどんなものか分からないんですけどね。(笑)
(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより追記)
各部牧郡城は法部のような省庁で、「牧」「郡」は州の下に置かれた地方行政単位ですので、それらの庁舎の垣根や城壁ってことでしょう。
各公廨墻垣はそれ以外の官庁庁舎の垣根ってことかと。

続いての第439条は、各官庁の庁舎に理由無く出入りした者は笞40回で、それによって犯罪を犯した者はその犯罪の刑罰に1等を追加。
第440条は、理由無く外国人の公館に勝手に入ったら笞40回で、門柵内であれば笞10回。
一つ飛んで第442条は、人の家や中庭に突入した者は笞50回で、堂に昇ったら懲役10ヶ月、房に入ったら懲役1年。
徒党を組んでやったら主犯だろうが従犯だろうが懲役刑で、それで犯罪を犯した者はその刑罰に1等を追加、と。

次の第454条は用語が難しいなぁ・・・。
賜牌を蒙有するか、買占したる文券有るか、衆所共知によって禁養されて何年も経ってる人の持山に埋葬したら笞50回、と。
要するに、人の土地に勝手に埋葬すんなって事?

(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)
王から牌を賜って有する(蒙有賜牌)か、買い取った地券があるかをみんなが知っていて(衆所共知)、長年持ち主が他者の伐採を禁じ樹木を育てている山(禁養)に埋葬する者は笞50。

第456条は、4が笞刑のある場合なんだけど、3が面白いなぁ。
柩を打つか、踏んだ者は懲役3年で、それによって死体を露出させたら終身刑。
で、肝心の4だけどこれも良く分からないので、取りあえずそのままにして逃げてみます。(笑)
婦女を率いて上山禁葬するか、金井又は築灰を破壊するか、穿壙処に火を放つか、水を灌するか、穢物を投げて作戯した物は笞100回。

(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)
4項は、婦女を率いて山に登り葬礼を行なうか、金井(墓穴にあてがう井字型の木型)または築灰(墓の内部で石灰と土砂を混ぜて叩いて固めたところ)を壊すか、掘ってある墓穴に火をつけたり水を注いだり、汚物を投げていたずらしたものは笞100回、と。

第459条は人の墳塚に何かした人の罪ですが、これまた用語が良く分からない。
3が塚に堀垓した者は笞100回。
既に意味わかんねー。(笑)
4は畜産を放って塚垓を毀損したら笞100回で、土を盛って固めたところを踏みにじったり壊す者は笞30回。
5は墳墓界限内で耕墾した者は笞20回。

(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)
3が塚の境い目を掘る者は笞100回。
4は畜産を放って塚の境い目を毀損したら笞100回で、封築を賤踏するか壊損したら笞30回。
5は墳墓の境界内で耕墾した者は笞20回。

もう、墓とかについては分かんない事だらけ。
第461条は、祖父母父母の墳塚を依礼遷葬する境遇礼に依って別の場所に改葬する場合(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)
を除いて侵犯した者についての1項。
塚を發き棺槨に未至の者塚をあばき、棺おけに至らなかった者(2007.8.17 xiaoke氏のコメントにより修正)は懲役7年に、第459条4項によってそういう状態にしたら笞40回。
んー、これまでの条文から考えて100回以上の笞刑にはならないだろうから、この場合該当する第459条4項の部分は「封築を賤踏するか壊損したる者」で、それで侵犯したら10回増えて笞40回になるって事かな?
それとも合計して70回の笞刑かな?
つうか、用語だけじゃなくて構造も分かりづれぇ。(笑)

次からは死体損壊に関して。
第466条は、遺体を焼いたり、剥割その他の方法で損壊したり、遺棄や水に投げ込むなどして遺体を失った者は終身刑。
遺棄したり水に投げ込んでも遺体を失わないか、鬚や髪、皮膚を傷付けただけなら懲役3年。
但し、刑死した死体を損壊した者は笞80回で済むわけですね。
第467条では、死人の肉を喰ったら笞80回・・・。
んー、燃やしたり削いだりは元より、髭や髪切るより、喰った方が刑が軽いんだ。(笑)

第469条は、第466条の刑罰が軽減される規定。
總麻以上の卑幼の死体に第466条の行為を行った者は、第64条の親族に対して行った犯罪の規定に基づいて刑を逓減し、子孫の死体に行った場合には笞100回。
第468条で尊長の場合には刑が増え、祖父母や父母の死体であれば絞首刑だったりするのに比べて、かなり軽減されるんですねぇ。

で、第471条では地面から死体が露出しているのを発見したのに、直ぐに埋め直さない者は笞80回。
第472条は、遺体を発見したのに官吏に報告せずに他の場所に移したり、勝手に埋葬したら笞80回。
そのために遺体を失うか、毀損するか、水や火に投じた場合には笞100回、と。

次はちょっと飛んで第495条。
妻や妾が姦通しているのを見てその相手を殺した場合ですが、1項の「行姦するを見て姦夫と姦婦を親獲して登時殺死したる者は論ぜず」って、浮気現場見て直ぐ殺害してもお咎め無しって事?
まぁ、それは置いておいて第2項。
姦夫が致した所から離れるのを見て、即時門外に追いかけて殺した場合は笞100回。
やったかどうかハッキリしない時は「故殺」の条項で、かな?

次も飛んで第511条。
喧嘩した場合。
第1項は素手の喧嘩で、傷を与えなければ笞30回で、傷つければ笞50回。
第2項では石や棍棒などの道具を使った場合で、傷を与えなければ笞50回で、傷つければ笞60回。
第3項は、汚物で人の顔を汚せば笞100回で、口や鼻の中に入ったら懲役1ヶ月。
飛んで第6項は、髭や髪を1寸四方以上抜いたら笞70回で、血が耳や目から出たり、口の中を切ったりして吐血した場合には懲役2ヶ月。

つうか、素手や物使って傷つけるより、髪や髭抜いた方が重罪ですか。
そうですか。(笑)


まぁ、現代でも傷害罪には当たるわけですが・・・ねぇ?(笑)

第517条は、私事で力によって人を拘束したら笞80回で、私人の家で拷問したり監禁したら笞100回で、折傷以上の行為については第511条各項に2等追加。
監禁して髭1寸四方以上抜いたら、笞90回?(笑)

第521条は過失傷害の場合で、過失によって人を傷つけたら笞30回で、それによって病気になったら笞100回。
障害者にしたら禁獄6ヶ月、と。

次が第529条。
第一節は謀殺人律で、第二節は故殺人律。
第473条から第478条に当たりますが、笞刑は含まれていませんでしたので今回の話の中では取り上げていません。
兎も角、それによって子孫を傷つけたら懲役10ヶ月で、傷つけるまでには至らなかったら笞50回。

つうか、殺人に関する所為で子孫を傷つけるとかつけないとか、割と意味不明なんですが・・・。


今日はここまで。



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