さて、前回は1910年(明治43年)12月15日『制令第10号 犯罪即決例』について、第1条まで、というか第1条だけを見ました。(笑)
おまけに、「今月の回顧録」があるのも忘れてたし・・・。
更に土日を挟んで、内容忘れてないか心配。(笑)

では、今回も1910(明治43年)12月15日付の朝鮮総督府官報第90号から、1910年(明治43年)12月15日『制令第10号 犯罪即決例』の続き、第2条から見ていきます。

犯罪即決例(クリックで拡大)

勿論、今回も分割しながら。

では早速。

第2条
即決は、裁判の正式を用いず、被告人の陳述を聴き証憑を取調べ、直に其の言渡を為すべし。
被告人を呼出すの必要なきとき、又は之を呼出すも出頭せざるときは、直に其の言渡書の謄本を本人又は其の住所に送達することを得。

第3条
即決の言渡を受けたる者之に服せざるときは、管轄区裁判所に正式裁判を請求することを得。
第2条、第3条は、用語等が若干変わっただけで、特に変更なし。
やはり、即決の言い渡しを受けた者がそれに不服な場合、管轄裁判所に正式な裁判を請求できる事は変わっていません。

第4条
即決の言渡書には、被告人の氏名、年齢、身分、職業、住所、犯罪の事実、適用したる法條、言渡したる刑、正式裁判を請求することを得べき期間竝言渡を為したる官吏の官職氏名及年月日を記載すべし。
第4条は新しい条文と考えた方が良い感じ。
即決の言渡書の記載内容に関する規定ですね。
書式は次の通り。

即決言渡書(クリックで拡大)

こんな感じになってます。

第5条
正式の裁判を請求する者は、即決の言渡を為したる官署に申立書を差出すべし。
其の期間は、第2条第1項の場合に於ては、言渡ありたる日より3日、同条第2項の場合に於ては言渡書謄本の送達ありたる日より5日とす。
前項の期間内に正式裁判を請求せざるときは、即決の言渡は確定したるものとす。
第5条は8月29日のエントリーの第4条とほぼ同じ。
第1条の該当項目によって、裁判請求の期限が変わってきます。
先ほどの事例でいくと、第2条第1項に該当するとして、3日以内ということでしょうね。
勿論、正式な裁判を請求しない場合には、即決の言い渡しで確定する、と。

第6条
前条の申立を受けたる官署は、速に関係書類を管轄区裁判所検事に送致すべし。

第7条
懲役、禁錮又は禁獄の言渡を受けたる被告人に対しては、警察署長又は其の職務を取扱ふ者は、勾留状を発することを得。

第8条
拘留の言渡を為したる場合に於て必要なるときは、第5条に定めたる期間内被告人を留置することを得。
但し、言渡したる刑期に相当する日数を過ぐることを得ず。
笞刑の言渡を受けたる被告人に付ては、笞5を1日に折算し、前項の規定を準用す。

第9条
罰金又は科料の言渡を為したる場合に於ては、其の金額を仮納せしむべし。
若納めざるときは、1円を1日に折算して被告人を留置す。
其の1円に満たざるものと雖、尚1日に計算す。

第10条
留置せられたる者正式裁判を請求し、呼出状の送達ありたるときは、直に其の留置を釈くべし。

第11条
第8条、第9条に依る留置の日数は、之を拘留の刑期に算入し、笞刑の言渡を受けたる者に付ては、1日を笞5に折算して其笞数に算入し、罰金又は科料の言渡を受けたる者に付ては、1日を1円に折算して其の金額に算入す。

附則
本令は、明治44年1月1日より之を施行す。
第6条から第11条は、8月29日のエントリーの第5条以下が再編された形になっていますので、最後まで引用してみました。
第6条は後段の留置規定が別の条文に置き換えられた形になっており、前段部は変わらず。

第7条は新しい条文。
勾留状の発行規定ですので、被疑者が逃亡したり、犯罪を犯した証拠を隠滅したりする恐れがあるときの身体拘束について、かな?
懲役、禁錮、禁獄の場合に警察署長やその職務取扱者が発行できる、と。
現代だと裁判官が発するものですね。

第8条、第9条、第11条は、これまでの第6条後段と第7条を整理再編した感じ。
ただ、笞刑の場合の留置日数の換算がこれまでありませんでしたが、それが付け加えられています。
笞5回を1日に換算してますね。
つうか、何で今まで留置日数の換算規定が無かったんだろう?(笑)

で、残りの第10条は、これまでの第8条と同じ。
最後に、この法律は1911年(明治44年)4月1日から施行、と。

ついでですんで、アジア歴史資料センターの『犯罪即決例、民事争訟調停ニ関スル件及弁護士規則ヲ定ム(レファレンスコード:A01200064000)』の20画像目から、犯罪即決例の改正理由も見てみましょう。

犯罪即決例案に対する理由書

朝鮮に於ける犯罪即決に付ては、明治42年勅令第240号を以て規定せられたりと雖、今や区裁判所の数大に減少せられたるに因り、犯罪即決に関し警察官憲の有する従来の権限を拡張し、以て区裁判所の不足に応ずるを便宜とす。
是れ、本案の改正を必要とする所以なり。
区裁判所は、1912年(明治45年)の朝鮮総督府裁判所令の改正で消滅してしまうわけですが、この頃からもう減らしてたのかな?
で、それを補うために即決権限を拡張する事が必要だ、と。

んー、この後の改正法の方もやっておきたかったんだけど、やっぱ法令関係は長くなるなぁ・・・。


今日はこれまで。



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