さて、今日から暫くの間は、1912年(明治45年・大正元年)に行われた、大幅な法規改正に関連したものを中心に取り扱っていきます。
勿論、今回のメインテーマである『朝鮮笞刑令』も、この1912年(明治45年・大正元年)に行われた整理の中で出てきた法令という事になります。

ってことで、まずは8月24日のエントリーで取り上げた、『統監府裁判所令』の改正から見ていきたいと思います。
この法律がまた頻繁に改正されてまして。

第1回目の改正は、併合後の割合に早い時期、1910年(明治43年)制令第5号として行われます。
アジア歴史資料センターの『公文類聚・第三十四編・明治四十三年・第二十一巻・司法門・裁判所(裁判所構成)・民事・刑事/統監府裁判所令中ヲ改正シ朝鮮総督府判事及検事ノ任用ニ関スル件朝鮮人タル朝鮮総督府裁判所職員ノ任用ニ関スル件及明治四十三年制令第一号ニ依ル命令ノ区分ニ関スル件ヲ定ム・・・(レファレンスコード:A01200063300)』より。

統監府裁判所令中改正の件

「統監」と「朝鮮総督」に、「韓国」を「朝鮮」に、「韓国法規」を「旧韓国法規」に、「韓国刑法大全」を「刑法大全」に改む。
第3条第3項を左の如く改む。
高等法院は前項の外、裁判所構成法に定めたる大審院の特別権限に属する職務を行ふ。
第24条削除。
韓国統監府から朝鮮総督府になった関係の読み替え。
第3条の韓国皇族に関する裁判規定の削除。
第24条の裁判所・検事局の定員の削除の3つですね。

次の改正は、この後すぐの1910年(明治43年)制令第9号。
『公文類聚・第三十四編・明治四十三年・第二十一巻・司法門・裁判所(裁判所構成)・民事・刑事/朝鮮総督府裁判所令中ヲ改正ス(レファレンスコード:A01200063400)』より。

朝鮮総督府裁判所令中、左の通改正す。

第6条に左の1項を加ふ。
朝鮮総督は、特別の必要ありと認むるときは、1の区裁判所又は地方裁判所に属する刑事訴訟事件を、其の裁判所と同等なる他の裁判所をして取扱はしむることを得。
元の第6条は、地方裁判所の管轄区域内の区裁判所の裁判事務を、同一管轄区域内の他の区裁判所に取り扱わせる事ができる規定でした。
さらに今回の規定で、「特別な必要がある場合」には、区裁判所や地方裁判所の刑事訴訟事件を、その裁判所と同等な別の裁判所に取り扱わせる事ができる、と。

6画像目に書かれている理由書の通り、人員や設備の不足による処理能力に対する不安解消って事でしょうね。

続いての改正は、1911年(明治44年)制令第4号。
『公文類聚・第三十五編・明治四十四年・第二十三巻・衛生・人類衛生・獣畜衛生、司法・裁判所・民法・刑事/朝鮮総督府裁判所令中ヲ改正ス(レファレンスコード:A01200076900)』より。

朝鮮総督府裁判所令中、左の通改正す。

第26条の2
判事は、在職中左の諸件を為すことを得ず。
1 公然政事に関係すること
2 政党、政派に加入すること
3 俸給ある又は金銭の利益を目的とする公務に就くこと
4 商業を営むこと
第26条の3
判事は、禁錮以上の刑に処せられたるときは、当然其の官を失ふ。

第26条の4
判事は、前條の場合又は懲戒の処分に依る場合を除くの外、其の意に反して其の官を失ふことなし。

第26条の5
判事身体又は精神の衰弱に依り、執務を執ること能はざるに至りたるときは、朝鮮総督は高等法院の総会の議決を経て、之に退職を命ずることを得。

第26条の6
朝鮮総督は、必要と認むるときは判事に休職を命ずることを得。
休職判事には、本俸4分の1を給す。
休職判事は、職を執らざるの外、在職者に同じ。
朝鮮半島では分限令が適用されない事から、改めて分限規程が追加されたんですね。

第26条の2では、政治への関与と、他に給料が出たり金銭の利益を目的とする公務、商業を営む事の禁止。
第26条の3は、禁錮以上の刑を受けたら失職。
第26条の4は、失職あるいは懲戒処分以外に、意に反した解雇はされないという、身分保障規定。
第26条の5は、怪我や病気による退職命令の規定。
最後の第26条の6は、休職中の取扱に関する規定という事になります。

さて、次がいよいよ大幅な変更を伴う1912年(明治45年・大正元年)制令第4号による改正になるんですが、非常に改正条文が多いことから、次回取り上げる事にしたいと思います。

つうか、今回笞刑全く関係無ぇ。(笑)
裁判所の処理能力辺りの話も、笞刑じゃなくて即決例に関係する話だしなぁ・・・。


ってことで、今日はここまで。



笞刑に関する整理(一) ~序~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(1)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(2)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(3)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(4)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(5)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(6)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(1)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
笞刑に関する整理(四) ~韓国司法及監獄事務委託~
笞刑に関する整理(五) ~統監府裁判所令~
笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
笞刑に関する整理(七) ~統監府監獄事務取扱ニ関スル件~
笞刑に関する整理(八) ~犯罪即決令~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(2)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(1)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(2)~