笞刑に関する整理というよりは、既に半島の司法関係の整理になっている気がしないでもない昨今、如何お過ごしでしょうか?
と書いて、「俺、朝鮮笞刑令の廃止まで、司法関係の改正事項とかも追うんだろうか?」と、自問したり。(笑)

そんな色々な事を考えながら、朝鮮総督府裁判所令の改正について、今日も触れていきたいと思います。
前回は、1910年(明治43年)制令第5号、1910年(明治43年)制令第9号、1911年(明治44年)制令第4号の3つの改正を取り上げました。
今回は4回目の改正。
1912年(明治45年・大正元年)制令第4号を、アジア歴史資料センターの『公文類聚・第三十六編・明治四十五年~大正元年・第十六巻・衛生・人類・獣畜、願訴、司法・裁判所~刑事/朝鮮総督府裁判所令中ヲ改正ス(レファレンスコード:A01200088600)』より。

朝鮮総督府裁判所令中、左の通改正す。

第2条第1項を左の如く改む。
朝鮮総督府裁判所を分ちて、地方法院、覆審法院及高等法院とす。

第3条
地方法院は、民事及刑事に付第一審裁判を行ひ、且非訟事件に関する事務を取り扱ふ。
覆審法院は、裁判に対する控訴及抗告、高等法院は、覆審法院の裁判に対する上告及抗告に付裁判を行ふ。
高等法院は、前項の外裁判所構成法に定めたる大審院の特別権限に属する職務を行ふ。

第4条
地方法院は、判事単独にて裁判を為す。
但し、左に掲ぐる事件に付ては、3人の判事を以て組織したる部に於て、合議して裁判を為す。
1 訴訟物の価額1,000円を超過する民事事件
2 人事訴訟事件
3 破産事件
4 刑法第74条及第76条の犯罪事件
5 死刑、無期又は短期1年以上の懲役若は禁錮に該る犯罪事件
6 前2号の共犯事件
  但し、前2号の事件と同時に審判する場合に限る
覆審法院は、3人の判事、高等法院は5人の判事を以て組織したる部に於て、合議して裁判を為す。
高等法院の或部に於て上告を審問したる後、従来の判決例に異なりたる意見を有するときは、其の部は之を高等法院長に報告し、高等法院長は各部を聯合して更に之を審問し、及其の裁判を為さしむ。
此の場合に於ては、判事の3分の2以上列席することを要す。

第5条
朝鮮総督は、地方法院の事務の一部を取扱はしむる為、地方法院の支庁を設置することを得。

第6条
朝鮮総督は、地方法院の判事の1人又は数人に、刑事の予審を為すことを命ず。

第7条
第3条第3項の場合に於ては、高等法院長は各別の事件に付、其の院の判事又は下級裁判所の判事に予審を為すことを命ず。

第8条
朝鮮総督は、特別の必要ありと認むるときは、1の地方法院に属する刑事訴訟事件を、他の地方法院をして取扱はしむることを得。

第9条第1項を左の如く改む。
朝鮮総督府裁判所に検事局を竝置す。
地方法院支庁を設置したるときは、其の支庁に検事分局を竝置す。

第13条
覆審法院に覆審法院長を置く。
覆審法院長は、朝鮮総督の指揮監督を承け、其の院の行政事務を掌理し、管轄区域内地方法院の行政事務を指揮監督す。

第14条
地方法院に地方法院長を置く。
地方法院長は、其の院の行政事務を掌理す。

第15条第1項を左の如く改む。
地方法院支庁の判事は、地方法院長の命を承け其の支庁の行政事務を掌る。

第16条中、「控訴院及地方裁判所」を「覆審法院及地方法院」に改む。

第18条
覆審法院検事局に覆審法院検事長を置く。
覆審法院検事長は、其の局の事務を掌理し、管轄区域内地方法院検事局を指揮監督す。

第19条
地方法院検事局に地方法院検事正を置く。
地方法院検事正は、其の局の事務を掌理す。

第20条第1項を左の如く改む。
地方法院支庁の検事は、地方法院検事正の命を承け、其の支庁検事分局の事務を掌る。

第21条中、「控訴院」を「覆審法院」に改む。

第26条中、「区裁判所」を「地方法院支庁の」に改む。

附則
本令は明治45年4月1日より之を施行す。
本令施行前、区裁判所又は地方裁判所に於て第一審として受理したる訴訟事件及非訟事件は、現在の儘其の所在地を管轄する地方法院に、地方裁判所に於て第二審として受理したる訴訟事件及非訟事件は、現在の儘其の所在地を管轄する覆審法院移るものとし、既に為したる裁判は、第一審又は第二審の区別に従ひ、地方法院又は覆審法院之を為したるものと看做す。
本令施行前、控訴院に於て受理したる訴訟事件及非訟事件は、現在の儘其の所在地を管轄する覆審法院に移るものとし、既に為したる裁判は、覆審法院之を為したるものと看做す。
区裁判所と地方裁判所、控訴院、高等法院の三審制から、地方法院、覆審法院、高等法院の三審制への移行がメインですね。
それに伴って、8月24日のエントリーでは「○○の罪」でしかも刑罰主体で書かれていた第一審裁判が、「民事及び刑事」を扱う事となりました。
勿論、「朝鮮民事令」及び「朝鮮刑事令」の公布と関係してるのでしょう。

また、それによって「韓国人の犯したる罪(前回の改正で「朝鮮人の犯したる罪」に読み替え)」という表現も無くなりました。
正確に言うと、朝鮮刑事令や朝鮮民事令中の方に、朝鮮人にだけ適用される部分があるんですがね。

で、地方法院で扱う裁判のうち、第4号の刑法第74条及第76条の犯罪事件ってのは、皇室に対する罪のうち、天皇・太皇太后・皇太后・皇后・皇太子・皇太孫や、神宮・皇陵に対する不敬罪と、皇族に対する不敬罪。

後は、殆どが名称変更と事務整理に関する話ですね。
ってことで、条文が長かったので解説は簡単に。(笑)


今日はこれまで。



笞刑に関する整理(一) ~序~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(1)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(2)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(3)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(4)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(5)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(6)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(1)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
笞刑に関する整理(四) ~韓国司法及監獄事務委託~
笞刑に関する整理(五) ~統監府裁判所令~
笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
笞刑に関する整理(七) ~統監府監獄事務取扱ニ関スル件~
笞刑に関する整理(八) ~犯罪即決令~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(2)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(1)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(2)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(1)~