制定当時の各条文についての理由書でもあればなぁ、と思う昨今。
今日もアジア歴史資料センターの『公文類聚・第三十六編・明治四十五年~大正元年・第十六巻・衛生・人類・獣畜、願訴、司法・裁判所~刑事/朝鮮刑事令ヲ定ム(レファレンスコード:A01200089200)』と、国会図書館の近代デジタルアーカイブから、朝鮮総督府の出した『明治四十五年行政整理顛末書』を見ながら、1912年(明治45年・大正元年)『制令第11号 朝鮮刑事令』の続きを。

第30条
故障の申立を為したる者は、其の事件に付判決ある迄、何時にても之を取下ぐることを得。
此の場合に於ては、前に為したる欠席判決は確定の効力を生ず。
検事は上訴を取下ぐることを得。
故障を申し立てた者は、その事件について判決があるまでは、いつでも取り下げできる。
その場合、前に行った欠席判決は確定。
で、検事は上訴を取り下げる事ができる、と。
割とそのまま。(笑)

第31条
上告を為すには其の申立書を原裁判所に差出し、且其の申立を為したる日より5日内に趣意書を差出すべし。
原裁判所申立書及趣意書を受取りたるときは、速に相手方に上告の申立ありたることを通知し、且同時に趣意書の謄本を送達すべし。
第27条は故障申立と再審請求についてでしたが、ここでは上告について。
上告の申立書を原裁判所に提出し、その申し立てをした日から5日以内に趣意書を提出。
申立書と趣意書を受け取った裁判所は、すぐに相手からに上告があった事を通知し、同時に趣意書の謄本を送達、と。

これもそのまま。
前回、105人事件の梁起鐸の上告趣意書を例にあげましたが、その際は3月20日に申し立てを行い3月25日に趣意書を提出していますので、初日不参入で5日以内ということでしょう。

第32条
刑事訴訟法第281条第1項の答弁書は、之を原裁判所に差出すべし。
原裁判所答弁書を受取りたるときは、速に其の謄本を上告申立人に送達すべし。

第33条
上告申立人期間内に趣意書を差出さざるときは、其の上告の申立に付ては刑事訴訟法第274条の規定を準用す。

第34条
上告申立人は、趣意書を差出すべき期間を経過したる後、14日内に追加趣意書を上告裁判所に差出すことを得。
刑事訴訟法第280条及第281条の規定は、前項の場合に之を準用す。
先に刑事訴訟法関連部分を見ていきましょう。
第274条は、「法律上の方式に違ひ、又は期間を経過したる上告の申立は、原裁判所決定を以て之を棄却す可し。此決定に対しては、抗告を為すことを得。」。
第280条が、「上告裁判所趣意書を受取りたるときは、速に其謄本を相手方に送達す可し。」。
第281条第1項は、「上告の相手は、趣意書の謄本の送達を受けたる日より5日内に答弁書を上告裁判所に提出することを得。」。
第2項は、「上告裁判所答弁書を受取りたるときは、速に其謄本を上告申立人に送達す可し。」。

第32条は、刑事訴訟法上第281条での上告裁判所を、原裁判所に読み替える規定。
提出先と送達する所が原裁判所なんですね。

第33条では、上告を申し立てた人が期限内に趣意書を出さなかった場合の対処は、申立書を期限を過ぎて出した場合と同様に、原裁判所の決定で上告を棄却し、その決定については抗告できる、と。

第34条は、趣意書を提出すべき期間、つまり申立書を提出してから5日後から、さらに14日以内に追加趣意書を提出できる。
最初の趣意書は原裁判所に提出し、追加趣意書は上告裁判所に提出ですね。
その場合の答弁書の取扱については、刑事訴訟法の第280条と第281条を準用する、と。

第35条
上告の相手方は、上告申立期間の経過後追加趣意書を差出し得べき期間の満了前に限り、附帯上告を為すことを得。
附帯上告は、其の趣意書を原裁判所に差出すに依りて之を為す。
附帯上告に付ては、前条の規定を適用せず。

第36条
趣意書、追加趣意書又は答弁書には相手方の数に応ずる謄本を添附すべし。

第37条
上告裁判所は、追加趣意書を差出し得べき期間満了後の日時を以て公判期日を定め、遅くとも開廷より3日前に之を訴訟関係人に通知すべし。

第38条
差押物件の還付を為すべき場合に、所有者の所在不明なる為め又は其の他の事由に因り還付を為すこと能はざるときは、検事は公示に依り還付の請求を為すべき旨を催告すべし。
公示の日より6月内に其の請求なきときは、物件は国庫に帰属す。
前項の場合に於て、保管に不便なる物件は、之を公買して其の代金を保管することを得。
まずは第35条。
附帯上告ってのは、お前ぇが上告するなら俺も上告するってヤツ。
上告された方は、上告した方が追加趣意書を提出できる期間に、趣意書を原裁判所に出すことで附帯上告が出来る。
その場合、第34条の規定は適用しない、と。

第36条は単純に、趣意書・追加趣意書・答弁書には、相手方の人数分の謄本を添付すること、と。

第37条も単純で、追加趣意書の提出期限後で公判期日を決め、遅くとも開廷3日前には訴訟関係人に通知すること。

第38条は、差し押さえた物件を返す場合に、所有者の所在が分からなかったり、他の事情から還付できない時には、検事は公示によって「還付請求しなさい」という催告をしなさい。
その公示日から6ヶ月以内に請求が無い場合は、国庫に帰属。
また、その場合に保管に不便な物品は、公買して代金を保管しておく、と。
生ものとかかな?


「生ものとかかな?」で終わるのもどうかと思いながら、今日はこれまで。(笑)



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