今回は、笞刑令の施行規則です。
施行規則は総督府令になりますので、アジ歴でも中々見かけないわけなんですが、8月10日のエントリーで紹介した、今回の連載の切っ掛けとなったnominally氏のスレッドで、総督府官報が提示されていますので、そちらをお借りしてテキスト化を。

それでは早速、1912年(明治45年・大正元年)3月19日付朝鮮総督府官報号外から、『朝鮮総督府令第32号 朝鮮笞刑令施行規則』について。

朝鮮笞刑令施行規則(クリックで拡大)

朝鮮笞刑令施行規則

第1条
笞刑を執行せむとするときは、医師をして毎回受刑者の身体を診査せしめ、其の健康笞刑を受くるに堪へ難きものと認むるときは、執行を猶予すべし。
但し、医師をして診査せしむること能はざるときは、立会官吏の認定に依り直に執行し、又は執行を猶予することを得。

第2条
執行を猶予したる為受刑者を留置せざるときは、之をして住居の場所を定め、指定の期日に出頭すべきことを誓はしめ、且相当の保証人を立てしむべし。

第3条
笞刑の執行中、受刑者の心神又は身体に著しき障害ありと認むるときは之を停止し、必要なる場合に於ては第1条の手続を為すべし。

第4条
笞刑を免じ、若は笞刑の執行を免ずる処分は、検事又は即決官署の長之を行ふ。

第5条
笞刑の執行には、典獄、看守長又は即決官署の長又は其の代理官立会ひ、受刑者に笞刑を執行すべきこと。
並其の笞数を告知したる後、所属官署の吏員をして之を執行せしむ。

第6条
笞刑の執行は、大祭祝日、1月1日、1月2日、12月31日並日出前日没後に之を為すことを得ず。

第7条
笞刑の執行中は、執行に従事する者の外其の場内に入ることを得ず。
但し、立会官吏の許可を得たる者は此の限に在らず。

第8条
笞刑の執行を受くべき者同時に2人以上あるときは、1人宛執行し、其の間他の受刑者を執行の場所に入らしむべからず。

第9条
笞刑の執行2回以上に亘るときは、連日之を執行すべし。
但し、事情に依り隔日之を執行することを得。

第10条
笞刑の執行を終りたるときは、立会官吏其の始末書を作り、署名捺印すべし。

第11条
笞は長さ1尺8寸、厚さ2分5厘、濶さ笞頭7分、笞柄4分5厘にして、竹片を以て之を作り、疎節を削除し麻を以て縦に之を裹み、笞頭は断余を片頭に1寸2分を剰じ、笞柄は6分を剰じ、麻糸を以て密に其の外部を横纏し、1纏毎に背部に交結して以て一条稜を成し、長さ5寸布片を以て其の笞柄を包み、外径は笞頭2寸2分、笞柄1寸5分とす。

附則
本令は明治45年4月1日より之を施行す。
まずは第1条。
笞刑執行時の体調管理ですね。
笞刑を執行しようとするときは、医者に毎回受刑者の体を診察させ、その健康状態が笞刑を受けるのに堪えられないと判断されたら、執行を猶予すること。
但し、医者に診察させる事ができない場合には、立会官吏の認定で執行又は執行猶予できる、と。

第2条は、執行を猶予し受刑者を留置しない時には、受刑者に居場所を確定させ、指定の期日に出頭する事を誓わせ、相当の保証人をたてる事、と。
これで受刑者がトンズラぶっこいたら、保証人が代わりに笞刑にされたりして。(笑)

第3条では、刑の執行中に受刑者の心身に障害があると認めた場合には、刑の執行を停止し、必要な場合には第1条の手続きをとること。

第4条では、笞刑を免じたり、笞刑の執行を免じる処分は、検事または即決官署の長が行う。

第5条は、笞刑の執行には、典獄か看守長か即決官署の長またはその代理官が立ち会って、受刑者に笞刑を執行すること。
で、その笞数を告知した後、所属官署の吏員に執行させること、と。

第6条では、大祭祝日、1月1日、1月2日、12月31日、日没から日の出までの間は、笞刑を執行できない。

第7条は、笞刑の執行中は、執行する者以外その場内に入ることはできない。

第8条は、笞刑の執行を受けるべき者が同時に2人以上いても、1人づつ執行して、その間は他の受刑者を執行場所に入れてはならない、と。

第9条では、笞刑の執行が2回以上、つまり30回を超える笞刑については、連日で執行する事。
但し、事情によって1日おきに執行する事ができる、と。

第10条は、笞刑の執行が終わったら、立会官吏はその始末書を作って署名捺印。

最後の第11条は、笞そのものに関する規定。
長さ1尺8寸ってことは、約55cmくらい。
8月14日のエントリーで見た、刑法大全における笞は78cmくらいなので、一回りか二回り短い笞になりました。
で、その笞の作り方も詳細に決められてますね・・・。
読んでも良く分かんないくらい。(笑)


ってことで、前回長かった分、今日は簡単に。



笞刑に関する整理(一) ~序~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(1)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(2)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(3)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(4)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(5)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(6)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(1)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
笞刑に関する整理(四) ~韓国司法及監獄事務委託~
笞刑に関する整理(五) ~統監府裁判所令~
笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
笞刑に関する整理(七) ~統監府監獄事務取扱ニ関スル件~
笞刑に関する整理(八) ~犯罪即決令~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(2)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(1)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(2)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(1)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(2)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(1)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(2)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(3)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(4)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(5)~
笞刑に関する整理(十三) ~犯罪即決例改正~
笞刑に関する整理(十四) ~朝鮮笞刑令~