今日は、明治45年に行われた大規模な行政整理の残りのうち、司法に関して重要と思える話2つについて。
1912年(明治45年・大正元年)『制令第14号 朝鮮監獄令』と『制令第26条 司法警察事務並令状執行ニ関スル件』をお送りしたいと思います。

まずは、1912年(明治45年・大正元年)『制令第14号 朝鮮監獄令』について。
アジア歴史資料センターの『公文類聚・第三十六編・明治四十五年~大正元年・第十六巻・衛生・人類・獣畜、願訴、司法・裁判所~刑事/朝鮮監獄令ヲ定ム(レファレンスコード:A01200089500)』と、国会図書館の近代デジタルアーカイブから、朝鮮総督府の出した『明治四十五年行政整理顛末書』から見ていきたいと思います。

では早速。

勅令第14号
朝鮮監獄令

第1条
監獄に関する事項は、本令其の他の法律に特別の規定ある場合を除くの外、監獄法に依る。

第2条
監獄法中、主務大臣の職務は朝鮮総督之を行ふ。

第3条
拘置監には、笞刑の執行を受くべき者を留置することを得。

第4条
新に入監する者伝染病に罹りたる者なるときは、入監せしめざることを得。

第5条
在監者には、糧食の自弁を許すことを得。

附則
本令は、明治45年4月1日より之を施行す。
第1条は、朝鮮監獄令と他の法律に特別な規定がなければ、監獄法で処理。
監獄法ってのは、1908年(明治41年)『法律第28号 監獄法』の事で、どうやら刑事施設について世界で最初に規定された法律らしい。
それを朝鮮にも適用。

第2条では、主務大臣の職務、つまり司法大臣の職務は朝鮮総督が行う、と。

第3条は笞刑の話。
拘置監には、笞刑の執行を受けるべき者を留置できる、と。
朝鮮笞刑令の第8条「笞刑の言渡を受けたる被告人、朝鮮内に一定の住居を有せず又は逃走の虞あるときは、検事又は即決官署の長は之を監獄又は即決官署に留置することを得。」及び、第9条の「笞刑の言渡確定したる者は、其の執行を終る迄之を監獄又は即決官署に留置す。第3条の規定に依り換刑の処分を受けたる者亦同じ。」の場合でしょうね。

で、この笞刑執行対象者を留置できる「拘置監」について。
監獄法の第1条を見て貰った方が早いと思いますので、そちら(レファレンスコード:A03020743400)を見ることにします。

第1条
監獄は、左の4種とす。

1 懲役監
  懲役に処せられたる者を拘禁する所とす
2 禁錮監
  禁錮に処せられたる者を拘禁する所とす
3 拘留場
  拘留に処せられたる者を拘禁する所とす
4 拘置監
  刑事被告人及び死刑の言渡を受けたる者を拘禁する所とす
拘置監には、懲役、禁錮又は拘留に処せられたる者を一時拘禁することを得。
警察官署に附属する留置場は、之を監獄に代用することを得。
但、懲役又は禁錮に処せられたる者を、1月以上継続して拘禁することを得ず。
ってことで、「拘置監」というのは、刑事被告人、死刑囚の拘禁と、懲役・禁錮・拘留に処せられた者の一時拘禁ができる所ですね。
まぁ、笞刑も普通に進めば、最高の100回の者でも4日で終わりますからね。
特に変わった規定でも無く。

続いての第4条は、新規入監者が伝染病に罹っている場合、入監させない事ができるという、割と当たり前の話の規定。
つうか、監獄法に無いものが特に規定されているって事は、そういう伝染病に罹っている事例が多いって事だろうなぁ。

で、最後の第5条は、在監者には自分でメシを用意する事を許可できる、と。
日帝、優しいのか金無ぇのか、良くわかんねぇ。(笑)

さて、続いては、1912年(明治45年・大正元年)『制令第26条 司法警察事務並令状執行ニ関スル件』について。
制定時の史料はちょっとアジ歴で見つからなかったので、代わりに『大正13年版 朝鮮法令輯覧(レファレンスコード:A06032017900)』の873画像目を見てみる事にします。

司法警察事務竝令状執行に関する件
明治45年7月 制令第26号

司法警察官の職務は、已むを得ざる場合に於ては、巡査又は憲兵上等兵をして之を行はしむることを得。
勾引状又は勾留状の執行は、已むを得ざる場合に於ては、巡査補又は憲兵補助員をして之を為さしむることを得。

附則
本令は公布の日より之を施行す。
憲兵については、警察官の職務に関しては9月4日のエントリーで。
司法警察官の職務については、9月10日のエントリーで触れました。
で、特に今回の司法警察官については、9月10日のエントリーでは「憲兵下士」までが、検事の指揮を受けて司法警察官の職務を執行する事が出来るとされていました。

んで今回は、やむを得ない時には、巡査及び憲兵上等兵が司法警察官の職務を執行させることができる。
同じく、やむを得ない時には、巡査補や憲兵補助員に勾引状や勾留状の執行をさせることができる。
限定的権限とはいえ、巡査補や憲兵補助員まで狩り出さなきゃならないってのは、いかにも人手不足だよなぁ・・・。


ってところで、今日はここまで。



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