以前、9月6日のエントリー9月7日のエントリーで取り上げた事のある裁判所令の改正。
その際には、朝鮮笞刑令のだされた1912年(明治45年・大正元年)までの改正を取り上げましたが、今度は朝鮮笞刑令が廃止される事になる1920年(大正9年)までの改正について、簡単に見ていこうかな、と。

まぁ、大した話でも無いので、今日のエントリーは読み飛ばしてOK。
( ´H`)y-~~


ってことで、まずはアジア歴史資料センターの『公文類聚・第三十七編・大正二年・第十九巻・衛生・人類・獣畜、司法・裁判所・民事・刑事/朝鮮刑事令中改正制令案(レファレンスコード:A01200097600)』から、1913年(大正2年)制令第4号。

朝鮮総督府裁判所令中、左の通改正す。

第20条の2
朝鮮総督府司法官試補より、新に朝鮮総督府判事又は朝鮮総督府検事に任ぜられたる者を補すべき欠位なきときは、朝鮮総督は欠位ある迄、予備判事又は予備検事として地方法院、地方法院支庁又は其の検事局に勤務せしむ。

第20条の3
地方法院長又は検事正は、必要ある場合に於ては、予備判事又は予備検事をして、地方法院又は其の支庁の判事又は検事を代理せしむることを得。

第21条の2
朝鮮総督府裁判所及検事局に朝鮮総督府司法官試補を置く。
司法官試補は、地方法院又は其の支庁の判事又は検事の監督を受け実務を修習す。
司法官試補は、奏任官の待遇とす。

第21条の3
司法官試補は、其の修習を監督する判事の命令あるときは、司法事務を取扱ふことを得。
但し、如何なる場合に於ても、裁判又は登記を為すことを得ず。

第21条の4
朝鮮総督は、司法官試補をして地方法院又は其の支庁の検事の職務を代理せしむることを得。
但し、第4条第1項の各号に掲ぐる事件に付ては、此の限に在らず。

附則
本令は、公布の日より之を施行す。


理由
朝鮮総督府裁判所判事及検事の補充上、内地と同じく司法官試補竝予備判事及予備検事を置くの必要あるに依る。
簡単に言うと、内地同様の判事・検事の見習い制度の導入。
司法事務が委託されてから4年。
韓国併合から3年かぁ。
丁度、新しい司法官試補が出てきた頃なのかもね。

第21条の2を見ると、奏任官待遇だったようです。
割と良い待遇。(笑)

続いての改正は、1920年(大正9年)まで飛びます。
1920年(大正9年)には2度改正が行われているんですが、朝鮮笞刑令が廃止になる1920年(大正9年)4月の段階ではそのうちの一方しか出されていませんので、そちらの方のみ御紹介を。
アジア歴史資料センターの『公文類聚・第四十四編・大正九年・第二十八巻・司法・裁判所・執達吏・公証人・民事(民法・戸籍)・刑事/朝鮮総督府裁判所令中改正制令案(レファレンスコード:A01200192100)』から、1920年(大正9年)制令第3号。

朝鮮総督府裁判所令中、左の通改正す。

第4条中「前2号」を「前3号」に改め、同条第1項第5号の次に左の1号を加ふ。

5の2 短期1年に満たざる有期の懲役若は禁錮又は罰金に該る犯罪事件にして、予審を経たるもの
同条第1項の次に、左の1項を加ふ。

登記事務は、裁判所書記をして之を取扱はしむることを得。
第25条 削除

附則
本令は、公布の日より之を施行す。
本令施行前、地方法院又は其の支庁に於て公判に着手したる第4条第1項第5号の2の事件は、従前の例に依り之を完結す。


理由
1 第4条第1項改正の理由は、短期1年に満たざる有期の懲役若は禁錮又は罰金に該る罪と雖、予審を必要とするが如き事件は、内容錯雑紛糾して事実の真相を捉ふるに困難なるもの多きが故に、合議制に依り慎重に裁判権を行ふの必要あるに由る。
同条第2項追加の理由は、判事に差支を生じ登記事務の取扱に支障を来す場合に処する為にして、殊に地方法院支庁の如き、其の大部分は判事1名を配置せるのみなるを以て、病気、出張、その他の事故に因り判事が事務を執ること能はざる場合に、最も必要を感ずるに由る。

1 第25条を削除する理由は、朝鮮人たる判事、検事の学識技能漸く発達し、之をして内地人又は外国人関係の事件に付裁判事務を取扱はしむるも、毫も裁判の威信を傷くるの虞なしと認むるに由る。
9月7日のエントリーで裁判所令は大幅に変わり、第4条もそのうちの一つでした。
で、第4条では基本的に、地方法院では判事単独で裁判をする事になっているわけですが、その中の例外として3人による合議制で行う事件が規定されたんでしたね。
で、そこに「1年以下の懲役・禁錮や罰金刑に該当する犯罪で、予審をしたもの」というのが加わったわけです。
理由は、予審しなきゃ駄目なような事件は、面倒くさい事件が多いから。(笑)

で、「前2号」が「前3号」に変わってますので、1年以下の懲役・禁錮や罰金刑で予審をした事件の共犯事件も3人による合議制になった、と。

更に、登記事務については、裁判所書記に取り扱わせる事ができるという1文を挿入。
理由は、地方法院支庁なんかは判事が1名しかいない所が殆どであり、何かの理由で判事が事務を執ることができないような状態の場合に不便だから、と。
勿論、直接裁判に係わる事務ではなく、登記事務だけ。
やっぱり、人手は足りないんだろうなぁ・・・。

で、第25条を削除。
8月24日のエントリーの法令本文と9月6日のエントリーでの改正条文から、削除された第25条は、以下のとおりとなります。

第25条
朝鮮人にして判事又は検事たる者は、民事に在りては原告被告とも朝鮮人たる場合、刑事に在りては被告人朝鮮人たる場合に限り其の職務を行ふ。
ということで、「朝鮮人たる判事、検事の学識技能漸く発達」したため、朝鮮人限定でしか仕事できなかったこの条文を解除。
併合から10年にしてやっとという気もしますが。(笑)


ってことで、今日はここまで。



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笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
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笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
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笞刑に関する整理(八) ~犯罪即決令~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
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笞刑に関する整理(十) ~適用事例(1)~
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笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(1)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(2)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(1)~
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笞刑に関する整理(十七) ~朝鮮監獄令と司法警察事務並令状執行ニ関スル件~
笞刑に関する整理(十八) ~警察犯処罰規則~