今日は、戦後の戸籍・国籍等の関係以外ではあまり触れられない、1918年(大正7年)『法律第39条 共通法』の話。
簡単に言えば、日本、台湾、朝鮮、関東州の各法令(戸籍・法人・民事訴訟・刑事訴訟)に関する連絡統一を図った法律。
いや、見た方が早いか。(笑)

ってことで、アジア歴史資料センターの『御署名原本・大正七年・法律第三十九号・共通法(レファレンスコード:A03021124000)』から。
長いので、半分にぶった切って見ていきます。

法律第39号
共通法

第1条
本法に於て地域と称するは、内地、朝鮮、台湾、関東州を謂ふ。
前項の内地には、樺太を包含す。

第2条
民事に関し1の地域に於て他の地域の法令に依ることを定めたる場合に於ては、各地域に於て其の地の法令を適用す。
以上の地域に於て同一の他の地域の法令に依ることを定めたる場合に於て、其の相互の間亦同じ。
民事に関しては、前項の場合を除くの外、法例を準用す。
此の場合に於ては、各当事者の属する地域の法令を以て其の本国法とす。

第3条
1の地域の法令に依り其の地域の家に入る者は、他の地域の家を去る。
1の地域の法令に依り家を去ることを得ざる者は、他の地域の家に入ることを得ず。
陸海軍の兵籍に在らざる者及兵役に服する義務なきに至りたる者に非ざれば、他の地域の家に入ることを得ず。
但し、徴兵終決処分を経て、第2等国民兵役に在る者は此の限に在らず。

第4条
1の地域に於て成立したる法人は、他の地域に於て其の成立を認む。
前項の法人は、他の地域の法令に依り、同種又は類似の法人の為すことを得ざる事項は、其の地に於て之を為すことを得ず。

第5条
1の地域の法人は、其の事務所若は営業所を他の地域に移転し、又は従たる事務所、若は営業所を他の地域に於て設立することを得。
但し、主たる事務所又は営業所の移転は、移転地に於て設立することを得べき法人と同種の法人に限り之を為すことを得。
前項の移転又は設立に必要なる条件は、各地域の法令の定むる所に依る。

第6条
1の地域の法人が、其の事務所若は営業所を他の地域に移転し、又は従たる事務所若は営業所を他の地域に於て設立したるときは、4週間内に各其の地の法令に依り登記を為すことを要す。
前項の規定は、法人に関し1の地域に於て生じたる事項に付、他の地域に於て登記を為すべき場合に之を準用す。

第7条
1の地域の会社は、他の地域の会社と合併を為すことを得。
此の場合に於ては、前条第1項の規定を準用す。
前項の合併に必要なる条件は、各地域の法令の定むる所に依る。

第8条
1の地域の法人の役員の行為に付定めたる過料の規定は、其の地域に於て他の地域の同種又は類似の法人の役員の為したる行為に之を適用す。
前項の役員とは、発起人、理事、監事及之に準ずへき者竝清算人を謂ふ。

第9条
民事訴訟及非訟事件に付、1の地域内に住所を有せざる者の裁判管轄、又は他の地域の法人の裁判管轄に関しては、民事訴訟法、人事訴訟手続法及非訟事件手続法中、日本に住所を有せざる者又は外国法人の裁判管轄に関する規定を準用す。
前項の規定の適用に付、裁判管轄の指定に関する司法大臣の職務は、朝鮮、台湾、関東州に在りては朝鮮総督、台湾総督、関東都督之を行ふ。

第10条
1の地域に主たる営業所又は住所を有する者に対しては、其の地域に於てのみ破産の宣告を為すことを得。
1の地域に於て為したる破産の宣告の効力は、他の地域に及ぶ。

第11条
1の地域に於て、民事訴訟、非訟事件又は破産事件に関して為したる訴訟行為、裁判、処分、其の他の手続上の行為は、他の地域に於ける法令の適用に関しては、其の地の法令に依り為したるものと同一の効力を有す。
但し、其の地の公の秩序又は善良の風俗に反するときは、此の限に在らず。
前項の規定は、民事争訟調停に付之を準用す。
民事争訟調停に関する規定なき地域に於ては、其の調停は民事訴訟法に依りて為したる和解と同一の効力を有す。

第12条
1の地域に於て作成したる公正証書、其の他法令に依り官署公署の作成したる文書は、他の地域に於て其の地の法令に依り作成したるものと同一の公正の効力を有す。
今回のポイントは第13条以下の刑事に関する事項なんですが、そこに行く前までで一区切り。(笑)

第1条は地域に関する規定。
内地(樺太含む)、朝鮮、台湾、関東州、と。
かなり後になって、南洋群島が追加されたりします。

第2条は民事の法令の適用に関する規定。
ちなみに第2条中「民事に関しては、前項の場合を除くの外、法例を準用す」の「法例」は誤字ではなく、1898年(明治31年)『法律第10号 法例』を指しています。
アジ歴では『御署名原本・明治三十一年・法律第十号・法令制定明治二十三年法律第九十七号法令廃止(レファレンスコード:A03020327600)』で見る事ができます。

つうか、「法令」じゃなく「法例」だぞ、アジ歴。
タイトル、しかも御署名原本のタイトル間違えてんの、恥ずかしすぎだろ。
( ´H`)y-~~


第3条は、地域間の戸籍の異動に関する規定。
ただ、この規定だけは附則に書かれている通り、施行期日が別。
『御署名原本・大正七年・勅令第百四十四号・共通法ノ一部施行ノ件(レファレンスコード:A03021138900)』で、第3条以外は1918年(大正7年)6月1日施行となっていますが、第3条だけは『御署名原本・大正十年・勅令第二百八十三号・共通法第三条ノ規定及大正十年法律第四十八号戸籍法中改正法律施行期日(レファレンスコード:A03021334600)』で、3年後の1921年(大正10年)7月1日施行となっています。
いや、余談。

第4条から第8条は、法人に関する規定。
1910年(明治43年)『制令第13号 会社令』とのからみはどうなるのか、少し調べてみたい気はするけど、それはあまりに脱線し過ぎなので今回は自重。

第9条から第12条は民事訴訟等に関する規定。

ってことで、法令が長いとテキスト起こしでほぼ終われるので楽ができるんですが、笑い所が無いのは困りもの。(笑)


今日はここまで。



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笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(2)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(3)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(4)~
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笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
笞刑に関する整理(四) ~韓国司法及監獄事務委託~
笞刑に関する整理(五) ~統監府裁判所令~
笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
笞刑に関する整理(七) ~統監府監獄事務取扱ニ関スル件~
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笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
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笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(1)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(2)~
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笞刑に関する整理(十四) ~朝鮮笞刑令~
笞刑に関する整理(十五) ~朝鮮笞刑令施行規則~
笞刑に関する整理(十六) ~笞刑執行心得~
笞刑に関する整理(十七) ~朝鮮監獄令と司法警察事務並令状執行ニ関スル件~
笞刑に関する整理(十八) ~警察犯処罰規則~
笞刑に関する整理(十九) ~裁判所令改正(3)~
笞刑に関する整理(二十) ~刑事令改正(1)~
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