今日は、さっさと本題へ。
アジア歴史資料センターの『御署名原本・大正七年・法律第三十九号・共通法(レファレンスコード:A03021124000)』から、前回の続き。

第13条
1の地域に於て罪を犯したる者は、他の地域に於て之を処罰することを得。

第14条
刑事に関し、1の地域に於て他の地域の法令に依ることを定めたる場合に於ては、各地域に於て其の地の法令を適用す。
2以上の地域に於て同一の他の地域の法令に依ることを定めたる場合に於て、其の相互の間亦同じ。
1の地域に於て他の地域の犯罪を処断する場合に於ては、前項の場合を除くの外、犯罪地の法令に依る。
但し、笞刑に関する規定は此の限に在らず。
犯罪地の法令に依り処断する場合に於て、処断地の法令に笞刑に関する規定あるときは、其の規定に依り笞刑の言渡を為すことを得。

第15条
1の地域の法人の役員又は支配人の行為に付定めたる刑罰の規定は、其の地域に於て他の地域の同種の法人の役員又は支配人の為したる行為に之を適用す。
前項の役員には、第8条第2項に掲ぐる者の外、検査役を包含す。

第16条
1箇の刑事事件又は牽連する数箇の刑事事件が、地域を異にする数箇の裁判官庁の管轄に属するときは、刑事訴訟法第27条及第28条の規定を準用す。

第17条
1の地域の検事、検察官又は其の職務を行ふ者、他の地域の管轄裁判官庁に於て事件を審理することを適当と認むるときは、其の地域の検事、検察官又は其の職務を行ふ者に之を送致することを得。
1の地域の予審又は第一審の裁判官庁、他の地域の管轄裁判官庁に於て事件を審理することを適当と認むるときは、検事、検察官又は其の職務を行ふ者の請求に因り、決定を以て其の地域の管轄裁判官庁に之を移送することを得。

第18条
1の地域に於て、刑事の訴訟若は即決処分又は仮出獄に関して為したる裁判、処分、其の他の手続上の行為は、他の地域に於ける法令の適用に関しては、其の地に於て為したるものと同一の効力を有す。
第11条第1項但書の規定は、私訴に之を準用す。

第19条
1の地域に於て為したる刑の執行猶予の言渡、又は仮出獄の処分は、他の地域に於て其の地の法令に依り之を取消すことを得。

附則
本法施行の期日は、勅令を以て之を定む。
但し第3条の規定に付ては、別に其の施行期日を定むることを得。
本法は、本法施行前に生じたる事項に付亦之を適用す。
但し、第11条第1項及第18条第1項の規定の適用に付ては、人の資格に基く既成の効果を妨げず。
本法施行前に宣告したる破産に付ては仍従前の例に依る。
第13条は管轄の問題。
どっかの地域で罪を犯した者は、別の地域で処罰することが出来る、と。

第14条は、法令の適用について。
まぁ、大抵の場合内地の法令に依るんだと思いますが、ある地域で他の地域の法律に依る事を定めた場合には、各地域でその地域の法令を適用する。
例えば、朝鮮刑事令の第1条で日本の各法律に依ることが定められているため、その地域の法律、つまり朝鮮刑事令を適用する。
んー、至って普通。

で、2以上の地域で同じ他の地域の法令による場合、その相互間も同じ。
日本の「爆発物取締規則」は、朝鮮刑事令、関東州裁判事務取扱令、いずれにおいても「依る」こととされているから、それぞれ朝鮮刑事令、関東州裁判事務取扱令を適用。

ある地域で、他の地域の犯罪を処断する場合、前記のような他の地域の法律に依る事になっている場合以外には、犯罪地の法令による。
つまり、日本で爆発物取締規則違反をして朝鮮で処断する場合には、朝鮮刑事令を適用。
日本だけに施行されている法律違反をして朝鮮で処断する場合には、犯罪地、つまり日本の当該法律を適用、と。

ただ、笞刑に関する規定は例外で、犯罪地の法令で処断する場合、処断地の法令に笞刑に関する規定がある場合、その規定によって笞刑の言い渡しができる。

んー、台湾の何かの法律に違反して、朝鮮で処断する場合、朝鮮笞刑令によって笞刑の言い渡しが出来る?
日本の内地人の場合は?
朝鮮笞刑令では「朝鮮人ニ限リ」、台湾の罰金及笞刑処分例では「本島人及清国人ノ犯罪」、関東州罰金及笞刑処分令では「支那人ノ犯罪」と、それぞれ適用対象が決められているわけだけど、その辺どうなってんのかな?

第15条は、法人関係の処罰規定について。
ある地域で、法人の役員や支配人の行為について定めた罰則規定は、その地域で、他の地域の同様の種類の法人の役員や支配人が行った行為について適用する。
良く分からんけど、法的に依用していなくても、類似行為による罰則が規定されていれば、適用できるってことかな?

第16条は、1つの刑事事件や関係する幾つかの刑事事件が、地域を別にするいくつかの裁判所の管轄になる場合、刑事訴訟法の第27条と第28条の規定を準用する、と。

ちなみに、刑事訴訟法の第27条は、「数箇の裁判所の管轄なる場合に於ては、其中にて最初予審又は公判に着手したる裁判所を以て其管轄なりとす。」。
第28条は、第1項が「従犯は正犯を管轄する裁判所を以て其管轄なりとす。
第2項が「数箇の裁判所の管轄に属する正犯数名あるときは、其中にて最初予審又は公判に着手したる裁判所を以て其管轄なりとす。」。

いくつかの県を跨るような事件に対する場合の想定ですね。
これを、内地や外地間に跨る場合にも準用。
朝鮮と関東州の間なんかだと、結構起こりそうな感じですね。

第17条は、ある地域から別の地域への送致や移送の規定。
第1項では、ある地域の検事と検察官とその職務を行う者から、他の地域の検事と検察官とその職務を行う者へ送致できる。
第2項では、ある地域の裁判官庁から、検事と検察官とその職務を行う者の請求に基づく決定で、他の地域の裁判官庁へ移送できる、と。

第18条は、ある地域での訴訟、即決処分、仮出獄について行った裁判、処分、その他手続き上の行為は、他の地域での法令の適用については、その地で行ったものと同一の効力がある、と。
例えば、台湾で裁判の結果有罪になれば、その後朝鮮に行っても前科1犯の取扱になるって事かな?

で、最後の第19条では、ある地域で行った刑の執行猶予の言い渡しや仮出獄処分は、他の地域で、そこの法令によって取り消すことが出来る、と。

附則については、前回も触れた施行期日の話と、法令の施行前後の適用の話。
つうか、「人の資格に基く既成の効果」って何だ?


相変わらず、法律関係だと疑問符が多いのですが、取りあえずここまで。



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