約2ヶ月にわたる連載も、今日で終了。
まぁ、新しい史料見つかれば、追加することは当然あるでしょうけど。

ってことで、統計に見る笞刑の3回目。
史料はアジア歴史資料センターや国立国会図書館の近代デジタルライブラリーの「朝鮮総督府統計年報」から。
今回はまず、10月4日のエントリーで少し述べた、全体の処分に対する笞刑数からみてみたいと思います。
最初は、犯罪即決処分に関する分について。

大正
元年
大正
2年
大正
3年
大正
4年
大正
5年
大正
6年
大正
7年
大正
8年
大正
9年
合計
懲 役 433 234 278 199 261 203 147 139 132 2,026
禁 錮 34 25 38 21 466 33 11 12 10 650
罰 金 5,746 7,211 6,528 6,794 7,965 9,230 10,585 8,747 13,626 76,432
拘 留 1,807 2,310 2,964 4,232 4,226 4,058 4,370 4,652 7,913 36,532
科 料 9,705 16,109 15,936 21,393 28,995 34,421 40,750 23,495 28,775 219,579
笞 刑 18,434 19,959 23,019 26,797 39,226 44,868 38,683 34,833 8,162 253,981
その他 800 327 1,336 935 982 29 94 61 823 5,387
合 計 36,959 46,175 50,099 60,371 82,121 92,842 94,640 71,939 59,441 594,587
割 合 49.88% 43.22% 45.95% 44.39% 47.77% 48.33% 40.87% 48.42% 13.73% 42.72%

つうか、大正元年、縦計いきなり1,000人合わねぇよ・・・。(;´Д`)
ってことで、表中の合計数より計算数優先にしてあります。

基本的に朝鮮人分のみを掲載していますが、大正8年、大正9年については国籍別の数が掲載されていないことから、内地人や外国人も含めた数になっている事に注意。
また、「その他」については、大正元年と大正2年の表を比較するに、無罪を含む実刑を受けなかった者の数と思われます。

続いて、裁判に関する全体の処分に対する笞刑数からみてみたいと思います。

大正
元年
大正
2年
大正
3年
大正
4年
大正
5年
大正
6年
大正
7年
大正
8年
大正
9年
合計
死 刑 66 51 52 50 47 38 46 11 29 390
無 期 53 26 16 30 30 20 16 18 11 220
懲 役 7,708 9,084 9,418 10,115 10,703 11,390 10,755 14,596 11,927 95,696
禁 錮 18 19 75 33 40 10 19 22 23 259
罰 金 1,280 1,532 2,202 3,053 3,497 3,863 6,776 22,203
拘 留 15 24 57 22 29 40 27 30 171 415
科 料 300 366 632 807 702 898 1,035 4,740
笞 刑 4,314 6,217 7,170 8,997 13,320 17,770 18,104 14,718 2,899 93,509
合 計 12,174 15,421 18,368 21,145 27,003 33,128 33,166 34,156 22,871 217,432
割 合 35.44% 40.32% 39.04% 42.55% 49.33% 53.64% 54.59% 43.09% 12.68% 43.01%

「監獄」での執行分の統計を使うと、財産刑の方が分からないので、「裁判」の項の「財産刑執行事件国籍別」と「体刑執行事件国籍別」から数字を拾っています。
ちなみに、財産刑部分については大正2年までは金額のみで集計されていることから、除外しました。

また、数字については、当該年に執行命令が出された中の、朝鮮人の数のみを対象としていますが、大正8年についてはやはり国籍別の数字が出ていない事から、内地人や外国人を含む数字となっております。

途中で笞刑が廃止される事になる大正9年を除けば、即決分も裁判分も、平均すると45%前後が笞刑の宣告になっていますね。

笞刑を除けば、即決処分については罰金や科料といった財産刑の宣告が多く、裁判においては懲役が多い傾向があるようです。
まぁ、収容施設の問題と、即決例の対象犯罪から考えれば、当然っちゃ当然な気もしますが。
即決については、笞刑や収監といった体刑より、財産刑の方が後処理簡単でしょうし。(笑)

で、最後に笞刑の回数に関する統計を。

大正
元年
大正
2年
大正
3年
大正
4年
大正
5年
大正
6年
大正
7年
合計
笞100回 296 6 4 21 17 16 7 367
笞99~90 779 1,273 1,587 2,410 3,441 4,255 4,335 18,080
笞89~80 71 28 55 49 61 293 315 872
笞79~70 30 32 125 160 166 178 151 842
笞69~60 536 831 1,048 1,094 1,914 2,353 2,178 9,954
笞59~50 116 54 80 87 181 340 415 1,273
笞49~40 15 23 37 39 87 103 204 508
笞39~30 247 336 409 327 690 753 597 3,359
笞29~20 48 65 118 148 189 365 376 1,309
笞19~10 5 34 20 17 36 35 48 195
笞9~0 3 4 7
合計 2,143 2,682 3,483 4,352 6,782 8,694 8,630 36,766

大正8年と大正9年については、回数の統計が取られていない事から除外し、大正元年から大正7年までの統計となっております。

大正元年の笞100回が非常に多いですが、これは刑法大全の名残と思われます。

で、全体的に見て「笞99~90」、「笞69~60」、「笞39~30」が多いわけですが、これは懲役や禁錮の3ヶ月(90日間)、2ヶ月(60日間)、1ヶ月(30日間)を振り替えたものが多いためと思われます。

つうか、最高刑の100回って以外に少ないのね。
勿論、財産刑で100円の場合以外には該当せず、先ほども述べたように懲役や禁錮の場合にはどう頑張っても90回が上限ですから、当たり前ではあるんですが。

ってことで、無闇矢鱈と笞打ってたわけではなく、基本刑に対して1日又は1円を笞1に計算するという条文に則して、実行されていたと思われます。
まして、「賭博」がほとんどだし。(笑)

でさ、「わが民族に対して思いのままに笞刑を行った。」って何?
( ´H`)y-~~



取りあえず、笞刑についてのお話は、これでおしまい。



笞刑に関する整理(一) ~序~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(1)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(2)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(3)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(4)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(5)~
笞刑に関する整理(二) ~刑法大全(6)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(1)~
笞刑に関する整理(三) ~民籍法(2)~
笞刑に関する整理(四) ~韓国司法及監獄事務委託~
笞刑に関する整理(五) ~統監府裁判所令~
笞刑に関する整理(六) ~韓国人ニ係ル司法ニ関スル件~
笞刑に関する整理(七) ~統監府監獄事務取扱ニ関スル件~
笞刑に関する整理(八) ~犯罪即決令~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(1)~
笞刑に関する整理(九) ~犯罪即決例(2)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(1)~
笞刑に関する整理(十) ~適用事例(2)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(1)~
笞刑に関する整理(十一) ~裁判所令改正(2)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(1)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(2)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(3)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(4)~
笞刑に関する整理(十二) ~朝鮮刑事令(5)~
笞刑に関する整理(十三) ~犯罪即決例改正~
笞刑に関する整理(十四) ~朝鮮笞刑令~
笞刑に関する整理(十五) ~朝鮮笞刑令施行規則~
笞刑に関する整理(十六) ~笞刑執行心得~
笞刑に関する整理(十七) ~朝鮮監獄令と司法警察事務並令状執行ニ関スル件~
笞刑に関する整理(十八) ~警察犯処罰規則~
笞刑に関する整理(十九) ~裁判所令改正(3)~
笞刑に関する整理(二十) ~刑事令改正(1)~
笞刑に関する整理(二十) ~刑事令改正(2)~
笞刑に関する整理(二十一) ~共通法(1)~
笞刑に関する整理(二十一) ~共通法(2)~
笞刑に関する整理(二十二) ~笞刑廃止と実績~
笞刑に関する整理(二十三) ~統計に見る笞刑(1)~
笞刑に関する整理(二十三) ~統計に見る笞刑(2)~