日清戦争開戦までの話が飽きてきてるので、もう少し別の話を。
今回取り上げるのは1939年(昭和14年)『訓令第七十七号 朝鮮人ノ氏ノ設定ニ伴フ戸籍事務取扱方ニ関スル件』について。
一昨年の9月26日のエントリーで出てきた「宿題」です。(笑)

つうか、2年も経つのか・・・。_| ̄|○
そのうち半分くらいが東学党の乱~日清戦争開戦までで消えてんのかな?
んー・・・。(笑)

で、丁度xiaoke氏が別件で総督府官報の調べ物があったそうなんで、ちょっと乗っかって調べて来てもらいました。

▲獄長いらっしゃいますか?

んでは早速カピペ。(笑)
1939年(昭和14年)12月26日付官報号外より、『朝鮮総督府訓令第77号 朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件』について。

朝鮮総督府訓令第七十七号1 (クリックで拡大)

朝鮮総督府訓令第77号

朝鮮人の氏の設定に伴ふ戸籍事務取扱方に関する件左の通定む。

昭和14年12月26日
朝鮮総督 南次郎

第1条
氏の届書に付ては別に1の種類を定むべし。

第2条
氏の届出を受理したるときは、府尹又は邑面長は附録第1号様式に依り戸籍の記載及訂正を為すべし。

第3条
昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定に依り氏の記載を更正する場合に於ては、附録第2号様式に依り戸籍の記載及訂正を為すべし。

第4条
府尹又は邑面長が前条の戸籍の記載を為したるときは、遅滞なく附録第3号書式に依り之を監督裁判所に報告すべし。
監督裁判所前項の報告を受けたるときは、届書に準じ之が取扱を為すべし。

第5条
監督裁判所が氏の届書の送付を受けたるときは、附録第4号書式に依り各旬毎に遅滞なく法務局長に報告すべし。

附則
本令は昭和14年制令第19号施行の日より之を施行す。
まずは第1条。
氏の届書については、別途様式を定める、と。
そのまま。

続いて第2条。
一昨年の6月19日のエントリーの朝鮮民事令中改正の附則第2号で、戸主は6ヶ月以内に新たに氏を定めて、府尹又は邑面長に届け出することになってましたが、それを受けた府尹又は邑面長は、付録の第1号様式に依って戸籍の記載・訂正をすること、と。

第1号様式については下のとおり。

朝鮮総督府訓令第七十七号2 (クリックで拡大)

続いて第3条。
昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定で氏の記載を更正する場合には、第2号様式によって戸籍の記載・訂正をすること。

まず、第2号様式については下のとおり。

朝鮮総督府訓令第七十七号3 (クリックで拡大)

そういえば、昭和14年朝鮮総督府令第221号についても宿題だった・・・。
つうか、もしかして同じ号外に載ってるんじゃなかろうか・・・。
xiaoke氏に確認頼めば良かった。
_| ̄|○

凹んでいても先に進まないので、取りあえず仮に中野文庫さんのところから、『昭和14年朝鮮総督府令第221号 朝鮮人ノ氏ノ設定ニ伴フ届出及戸籍ノ記載手続ニ関スル件』の第3条から引用。

第3条
昭和14年制令第19号附則第3項の規定に依り、戸主又は前男戸主の姓を以て氏としたるときは、戸籍の記載は訂正せられたるものと看做す。但し、更正することを妨げず。
戸籍の記載事項中、家を異にする者の氏定まりたるとき亦前項に同じ。
で、「昭和14年制令第19号附則第3項の規定」は、3回目の朝鮮民事令中改正の附則第3項で、一昨年の6月19日のエントリーでやりました。

附則第3項
前項の規定に依る届出を為さざるときは、本令施行の際に於ける戸主の姓を以て氏とす。
但し、一家を創立したるに非ざる女戸主なるとき、又は戸主相続人分明ならざるときは、前男戸主の姓を以て氏とす。
ってことで、6ヶ月以内に届け出を出さない場合に戸主の姓を氏にする規定。
所謂設定創氏ですね。

つまり、設定創氏の場合には、戸籍の記載は訂正されたものと見なす。
但し、更正するのは妨げないので、その更正を行う場合には第2号様式で、ってことですかね。

続いての第4条は、府尹又は邑面長が戸籍の更正を行った場合、遅滞なく第3号様式で監督裁判所に報告しろ、と。
んで、監督裁判所がその報告を受けたら、届出書に準じて取り扱え。

第3号様式以下についてはテキストにも起こしておきます。

朝鮮総督府訓令第七十七号4 (クリックで拡大)

氏の戸籍記載更正報告
本籍 何郡何面何里何番地
戸主 何某
前男戸主の姓 何(前男戸主の姓を氏としたる場合に記載す)

右昭和14年朝鮮総督府令第221号第3条の規定に依り、氏の戸籍記載を更正したるに付報告す。

昭和十五年  月  日
何府尹(又は邑面長) 氏  名㊞
何地方法院長(又は何地方法院何支庁判事)殿
戸籍自体は「訂正されたものと見なす」のに、更正する場合ってどういう場合なのかイマイチピンと来てないウリ。(笑)

で、最後の第5条。
監督裁判所が氏の届出書の送付を受けたら、第4号様式で各旬、つまり10日ごとに法務局長に報告すること、と。

続いて第4号様式。

昭和十五年  月  日
何地方法院長(又は支庁判事) 氏  名㊞
法務局長 殿

氏に関する報告の件

昭和15年何月何旬中当管内府邑面に於ける氏の届出受理件数左記の通報告す。

(イ) 氏別件数
一 従前の姓と同一の氏      件
二 内地人式氏と認めらるる氏  件
三 其の他の氏           件
     計               件

(ロ)職業別件数
一 何                 件
二 何                 件
     計               件

注 意
一 (イ)の二及三に付ては何氏何件何氏何件と内訳を記載すべし。
二 (ロ)に付ては昭和6年5月11日本府訓令第20号職業分類中小分類の例に依るべし。
ちなみに、一昨年の6月26日のエントリーでは、これにプラスして所在地別の件数表を付ける事になっていました。

つうか、そのエントリーの【1419】で、「三其の儘の氏」って読んでるけど「三其の他の氏」じゃんよ・・・。
_| ̄|○

さて、まずは第1の疑問。
2月1日のエントリーの実例のように、林、柳、南、桂等の姓の者が強いて同じ氏で届けた場合、「従前の姓と同一の氏」にカウントされるのか、「内地人式氏と認めらるる氏」としてカウントされるのか。

第2の疑問。
統計資料が、この規定に基づく数字であった場合、府邑面から各地方法院等に送られるタイムラグがあるのではないか。

一昨年の6月27日のエントリーの【1422】に見られるように、府邑面での取扱いがかなりいい加減なのを見ると、順調に送られていたとはとても思えず。

つまり、巷間総督府の強制により後半に「幾何級数的」に増加したと言われる、その統計数字について、「全て内地人式の創氏なのか」という点と、「戸主が届け出を行った時点でのカウントでは無いのではないか」という疑問ですね。

まぁ、件の数字の出典が何か分かりませんし、それが何を元にした数字なのかも分かりませんので、疑問を付するだけで終わってしまうんですがね。
数字の出所、誰か教えて欲しいなぁ。
( ´H`)y-~~


ってことで、非常に長くなりましたが、今日はここまで。



朝鮮民事令と第11条の第1回改正
朝鮮民事令第11条の第2回改正
朝鮮民事令第11条の第3回改正(一)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(二)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(三)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(四)
朝鮮民事令第11条の第3回改正(五)
朝鮮総督府編『朝鮮の姓』より
朝鮮人の氏名に関する件
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朝鮮戸籍及寄留例規(一)
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民籍法と民籍法執行心得
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